渡邉さんが報告してくれた自治体学会は、私も初めての参加でした。
とても充実したプログラムで、全てのセッションにおいて単なる知識の習得にとどまらず、
地域自治・地域主権、自治体・公務員に対する考え方まで含めて大変勉強になりました。
総じて時代は大きく動いているのだなと感じました。
そしてそれはこれまでに日本各地の自治体で行なわれた多くのブレイクスルー的取り組みの結果なのだとも思いました。
私自身は、地域の景観が真のローカリティを獲得するためには、
地域でその意味や価値を共有し、それを継承していくためのシステムを意志決定することが重要だと思い、
それはこの学会での議論とも関係するだろうなと思って参加し、その感をさらに強くしました。
この学会のメンバーともっと現場で連携しかなくてはいけないなと。
文化的景観を中心課題とした歴史学・民俗学・地理学・文化財学関係、共同体や合意形成を中心課題とした社会学・哲学関係、
そして、地域自治や地域主権を中心課題とした行政学・法学関係との交流。
さらには、生物多様性を中心課題とした環境関係、産業としての価値を超えた農林漁業関係も。
こうした他流試合を積み重ねていきながら、本当に地域づくりと密接に関係した景観の分野の展開を
目指していくことが、景観を市民に開かれたものにしていくためにとても重要だと考えています。
出会いと発見DIARY
つづいて、シンポジウム「現場から問う地域主権戦略」。元ニセコ町長で現在首相補佐官を務める逢坂さんがパネラーとして出席。私は存じ上げませんでしたが、逢坂さんは、町長時代にニセコ町が全国初の自治基本条例を策定したことで、自治の分野では非常に有名な方のようです。逢坂さんから地域自治に関する現状説明(出先機関の廃止や交付金、地方自治法改正の話など)ののち、様々な議論がありました。ナショナルミニマムをどう捉えるか?を今きちんと考え乗り越えていくことが成熟した民主主義の核心である。さらに、これからは市民の自治を高めシビルミニマムへ向かっていく。住民の力が問われる時代だ。財源に対する計画性など自治体の判断力、力量が問われる時代でもある。などなど。
最後に地域総合計画のあり方に触れ、逢坂さんから「地域総合計画の構想の部分はうるおい・いきいきみたいな漠然としたどの地域でも書けるようなことを書くのではなく、その自治体の哲学が書かれるべきであり、その構想について議会で話し合い議決することに意味がある」という発言がありました。とても感動的な発言だったと思います。
そして、最後の分科会「地域の売り出し方」は、佐賀のがばいばあちゃんのロケ地「淀姫神社」にて行われました。パネラーは武雄市樋渡市長、長崎市田上市長、由布院玉の湯の桑野さん。
なんとも豪華ですよ。大興奮です。
風が涼しく吹き始めた夕暮れ時、縁日のような雰囲気の中での分科会でした。
大切なお話としては「観光は波があって、変化するものだけれど、自分のまちであるということだけは変わらない。何をするにも、責任を持って立ち止まって考える」という桑野さんの発言。関連して、「大きな流れの中で見て判断をする。街は長く存在するので、方向性が大事。そのときの基準は短期間で見たら苦しくても長い目で見たらどちらが長く続くのか、ということだ。」という田上市長の発言。などなど。本当にそうだな、と共感。
最後に「観光で売り出すことで地域の本来の価値が損なわれることもあると思うんですが、どう考えていますか。」という質問をしてみたのですが、桑野さんから本当に素敵な回答をいただきました。
「人々に支持されるものが持続するものです。日本の風景の美しさは世界に支持されるものです。日本の風景の美しさに関わっていくことは行政にしかできないことですから、景観も含め、すべてを考えていくことが大切だと思います」と。
なんだか胸がいっぱいになる、ずっと大切にしていきたいお答えでした。
大切にします。ありがとうございます。
地域自治の世界にやっと一歩足を踏み込んだ、そんな二日間でした。風景や地域づくりを中心にして私たちのまわりに広がる新しい世界に視野を広げていくことは大切です。
地域自治と風景がどんな風につながっていくのかということについては、12月に熊本大学の伊藤洋典先生を講師に「地域自治と風景(仮)」をテーマにした風景デザインサロンが開催される予定ですので、そのときまたゆっくり考えてみたいと思います。
自治体学会2日目。
2日目は、分科会が7つとシンポジウムが開催されました。私は「自治体はローカルマニフェストをどう使いこなすか?」と「合併から連携へ」というテーマの分科会に参加。
ローカルマニフェストについては、最近は地方選挙の首長のローカルマニフェストが一般化されているものの、「ただ選挙の道具になっているのではないか」というマニフェスト懐疑論が高まっている現状を受けての議論。またまた古川知事登場。「首長が作ったマニフェストを自治体の政策に落とし込む翻訳作業が一番大事。いかに首長と自治体が協働してこの作業を行えるか、だ。」と。また「時代の状況に合わせてマニフェストも対応して変化させていくことが大切で、とにかくマニフェストを置物ではなく常に向き合い、生き物にしておかなければならない」とも。「このとき、変化させた部分については県民に説明して、理解してもらう。政治に県民の信頼を得ることこそがマニフェストの原点。」だそうな。これは1日目の基調講演にあった話につながりますね。「地域に対して責任を果たす」ということが、古川知事の考える地域自治を確立するために自治体の持つべき基本姿勢なのでしょう。自治体がおこなうべき改革に対する真摯な姿勢、強くて柔軟な自治体を目指す知事の姿にまたまた感動してしまいました。
もうひとつの分科会は「合併から連携へ」。税制上の理由から合併を進めていくのではなく「広域連携」という形で地域同士が補い合い支えあうかたちを模索するための議論がおこなわれました。パネラーには北海道のニセコ町長らが出席。ここでは、ニセコ町長が広域連合という仕組み(様々な広域的ニーズに柔軟かつ効率的に対応するため都道府県、市町村、特別区が広域連合という体制を設置できる制度。事務作業のうち、広域にわたり処理することが適当であると認められるものに関し、広域計画を作成し、必要な連絡調整を図り、総合的かつ計画的に広域行政を推進する)に対し、「広域連合には独自の財源と議会がないためにうまく機能していない」という現状を指摘した上で「もっとテーマごとに広域連合を作ったり、重層的で多様な広域自治体を認められるような仕組みに変えなければならない。地域で使いやすい仕組みを国に提言しなければならない」と語っていました。一元的でなく、多様な連携のかたちを、という発言に共感。景観や地域づくりに関しても同じことが言えます。重層性、多様性を認めていくということは現代のどんなテーマにも通用するような気すらしてくる。また、ここでは「合併=悪」ではなく、住民のライフスタイルや暮らしを崩さない合併であれば民主主義を促進するため合併に賛成する、なんて話題も出たのですが、そこらへんについてはまったく勉強不足でよく理解できず・・。これを機に自治については、少しずつ勉強していきたいですね。
さて、長くなってきたので、後半戦は、また次の日に。
8月19,20日と高尾さん、牛房くん、渡邉の3人で自治体学会に行ってきました。
自治体学会は地方自治体の職員さんや議員さん、大学の先生などによって組織されている学会で、全国大会では、地域自治に関するいくつかのテーマが設定され、基調講演や分科会が行われます。今年は佐賀県武雄市で開催されるということで、私たちも参加してきました。
もう、とってもとっても面白くて、勉強になりましたよ~!魅力的な地域の首長さんはお話上手で。 初日の基調講演は佐賀県の古川知事、パネルディスカッションでは武雄市長、埼玉県所沢市長、(株)いろどりの横石社長、という豪華メンバーの競演でした。古川知事の講演の中の「地域主権は権限やお金の引渡しではなく、地域が自分たちで責任を取れるようにすること」という言葉が印象的でした。そのためには、「行政組織職員の能力を高めることを庁内全体の総意としないといけない」と。「行政職員が今目の前にある仕事を少し高いところから見れるように。他流試合も大事だ。」と。真の地域自治を実現するために、責任を取れるだけの地域に成長していこうとする知事の姿勢が感じられました。
自治体学会、面白いぞ!と大興奮の一日目なのでした。
本日が締め切りですが、樋口が幹事長、高尾が事務局長をしている「風景デザイン研究会」で
現場見学会を開催しますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。
大変充実したプログラムとなっています。
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第15回風景デザインサロン【現場見学会】のお知らせ
「子守唄の里・五木村再生の取り組みと,頭地代替地のランドスケープ計画・設計」
第5回風景デザインワークショップの事例発表会において議論された「子守唄の里五木の村づくり」の現場見学会を行います.
川辺川ダム建設計画に伴う頭地代替地である「子守唄の里」は,土木学会デザイン賞優秀賞,
日本造園学会学会賞(技術部門)を受賞しており,細かなところまで配慮された,デザイン的に優れた作品です.
また同時に,現代における中山間地の暮らしや公共整備の在り方に対しても,すぐれた問題提起となっています.
デザインサロンは,現場見学と意見交換会の第1部(日帰り)と
懇親会および周辺集落見学を含めた第2部(1泊2日)の2部構成となっています.ぜひ,ご参加ください.
【日時】 平成22年8月20日(金)~21日(土)
【場所】 子守唄の里・五木村 熊本県球磨郡五木村甲,五木村役場
【講師】 徳永哲氏(株式会社エスティ環境設計研究所所長)
【主催】 風景デザイン研究会
【参加費】会員1,000円 非会員2,000円
(第1部,第2部あわせて.資料代,保険代を含む.宿泊費は別途)
【お申込・問合せ】
増山晃太(熊本大学大学院自然科学研究科)
e-mail:061d9412◎st.kumamoto-u.ac.jp(◎を@に変えてください)
TEL:090-8342-3979 FAX:096-342-3507
【詳細スケジュール】
第1部
8月20日(金)
13:30 受付開始 @五木村役場
14:00-16:00 意見交換会 @五木村役場
発表予定者:徳永哲氏,木下丈二氏(五木村副村長),
橋本悦治氏(観光協会会長),和泉大作氏(建設技術研究所)
16:30-17:30 現場見学会 @頭地代替地
第2部
18:30-21:00 懇親会 @民宿「山里」(会費4,000円予定)
8月21日(土)
9:00-11:00 村内奥地の集落環境をめぐり
※第2部参加者につきましては,懇親会,宿泊もあわせて受け付けいたします.
懇親会の参加,宿泊をご希望の方は8月10日(火)までにお申し込み下さい.
民宿「山里」一泊朝食付き4,500円
【参加方法】
参加申し込みフォーム部分に必要事項をご記入の上,増山までe-mailまたはFAXにてお申し込みください.
【参加申込みフォーム】
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第15回風景デザインサロン(H22.8.20-21開催)に参加します.
氏名 :
年齢 :
所属 :
連絡先 :
第2部 :参加・不参加
懇親会 :有・無
宿泊 :有・無
▽「子守唄の里 五木の村づくり」について,当日講師の方にお聞きしたい事を事前に受け付けております.
質問事項 :
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HP http://www.fukei-design.com/designsalon.html
フライヤー http://www.fukei-design.com/data/100820fds.pdf
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