風景と地域づくりの
出会いと発見DIARY
景観研究室は、プロジェクトや研究を通じて、九州各地の風景・地域づくりに取り組んでいます。地域の人達と未来を語り合う、デザインについて現場で喧々諤々議論する、素敵な風景や食文化を見つける、地域の人達との長いお付き合いが始まる…風景・地域づくりの中で、たくさんの出会いや発見、感動が生まれる毎日。そんな景観研究室の日常を、その時々の現役学生の目を通して、お伝えしていきます。
February 14, 2010
景観・デザイン論文集No.7【研究/高尾】

景観・デザイン論文集No.7が発刊されました。
わが研究室からも以下の4本の論文が掲載されました。
【B.計画・マネジメント部門】
 高尾忠志:地域ルールの明文化と共有に向けた景観法の活用
 吉岡聖貴、樋口明彦、高尾忠志、野口順平、佐藤直之:長崎県公共事業等デザイン評価制度の運用上の成果と課題
【D.調査・研究部門】
 林博徳、樋口明彦、高尾忠志、松永千晶:佐賀平野における地域住民のクリーク景観の捉え方に関する基礎的研究
 羽野暁、樋口明彦、荒巻祥大:樋門上屋の設計思想の変遷に関する研究-筑後川・矢部川を対象として-
苦労して頑張ってきたプロジェクトや研究成果が論文集に掲載されるのはやはり嬉しいものです。
学生のみんなも本当に頑張ったと思います。
私自身も長年地域の方々と取り組んできた由布院についてまとめることができて感慨深い論文となりました。

February 11, 2010
事例調査・石見銀山【五島/高尾】


五島プロジェクトでは、市の方々と一緒にたくさんの事例調査を行いました。
今年度調査を行った地域を挙げると、
・民泊の先進地である小値賀町
・我国で初めて集落が世界文化遺産となった白川村荻町
・我国で初めて景観計画を策定し、重要文化的景観に選定された近江八幡市
・同時に世界文化遺産を目指している長崎市、旧外海町、平戸市
これらに加え、今年度最後の事例調査として、2月9~11日に
我国で初めて「文化的景観」というテーマで世界文化遺産となった石見銀山を視察しました。
石見銀山以前に日本で世界文化遺産に登録されたものを挙げれば、
姫路城、厳島神社、原爆ドーム、京都、日光東照宮、熊野古道などなどであり、
登録され、より高い価値付けを受けることによって、それらが守られ、
後世により確実に残されていくということが主眼であったと考えられます。
結果的には、日本人なら誰もが知ってるメガ観光地が選ばれてきました。
そうした経緯からすれば、石見銀山は世界遺産による地域活性化を目標としてはっきりと示した
わが国で初めての事例であり、その良し悪しの議論も含めて、五島市にとってとても参考になる事例であったと思います。
印象に残ったポイントが2つありました。
一つは、市の担当者の方が
施策の不十分な点がわかれば、なるべく早く柔軟に修正する姿勢を持たなければならない。
しかし、これは行政が最も不得意とすることでもある。
石見銀山でも現場での問題点が見えてから施策を修正するのに随分長い時間を必要としました。

とおっしゃっていたことです。
世界遺産に関わる取組みは、通常の業務とは異なり、
何が起こるかわからない中で試行錯誤しながら、様々な人との合意形成を図っていくことが求められ、
もっと言えば特別なミッションを与えられた総合的な「プロジェクトチーム」を組織の中につくらないと
なかなか対応できないものであると言えます。
登録はゴールであるとともにスタートとなるため、腰を据えた、長い時間をかけた取組みとならざるを得ないでしょう。
もう一つは、石見銀山の世界遺産としての価値の伝え方についてです。
「文化的景観」の価値は、その景観を成立させている構造を理解しなければわからない。
でも、それは短い時間では難しいし、一般の観光客にはほとんど無理なお願いです。
これは五島にも共通する検討課題です。
石見銀山では充実した内容の世界遺産センターやDVDを作成し、ガイドの仕組みもあり、
集落から銀山までを歩かせることによって全体の構造を体験として理解させようとしている。
それでもやはりわかりにくいものはわかりにくい。ではどうするか?現場をみながら考察しました。
私の考えたポイントは、まず、中心(主役)を決めること。石見銀山ならやはり坑道と精錬所跡。
ここから遡っていくように全体の構造を説明する。つまり、ストーリーの起点を与え、結論を先に言うこと。
それからもう一点は、観光客に対して求めるレベルをわけること。
つまり、客が自分のレベルに合わせて情報へアクセスできるように、
観光客受け入れシステムの全体像をわかりやすくすること。
例えば、世界遺産センターとDVDとガイドの内容がどういう関係になっているのか、
どれが平易でどれがマニアックなのかがわかるようになっていること。
五島の場合は、これを他の市町と連携しながら、かつ市内の他の魅力も含めた総合的な内容として、
さらに言えば、出来る限り一本化されたシステムとして実現することが望ましい。
このシステムをどういった構造とするか、今後の重要な検討課題と思います。

February 6, 2010
土木学会デザイン賞(その1)【行事/羽野】

2月6日、土木学会デザイン賞2009授賞式が土木学会講堂にて行なわれました。
研究室が2005年度に設計した“遠賀川 直方の水辺”が、土木学会デザイン賞2009最優秀賞
をいただいたため、その授賞式+プレゼンテーションに参加しました。

写真上:遠賀川 直方の水辺

島谷デザイン賞選考委員長より、チームを代表して最優秀賞の表彰状を授与される坂本君(現
筑波大4年、当時の水辺館YNHCメンバー)。緊張の面持ちで拍手を浴びています。

プレゼンテーションの前半に、坂本君が野見山さんのメッセージを代読してくれました。遠賀川に
対する野見山さんの想いが会場に伝わり、私も熱いものがこみ上げてきました。授賞式に駆けつ
けてくれた研究室OBOGのみんなも、私以上に熱いものがこみ上げたことでしょう。
野見山さんのメッセージは、是非、原本を読むか、録画したビデオを見て欲しいところですが、野
見山さんの想いが伝わりきれないことを承知で以下に概略を記します。
~*~ 野見山さんのメッセージ ~*~
遠賀川は永くゴミの多い汚れた川であった。
15年前から活動を始め、ずっと遠賀川に夢をみてきた。
その中で、夢をみることは責任も伴うという住民として一番大切なことを学んだ。
5年前から九大が加わり知恵の輪がひろがった。
木や石や花などの模型を手に、何度も楽しく夢を論じ合った。
論じ合った夢が本当に実現し、嬉しくて嬉しくて “バンザイ!”だった。
夢が実現し、また次の夢に頑張るエネルギーをもらった。
いまは遠賀川は子供たちの笑顔であふれている。
このまちに遠賀川が流れていて良かった。
遠賀川にパチパチと拍手を送りたい。
私たちの遠賀川、バンザイ!


プレゼンテーションの後半、遠賀川のデザイン意図、計画から施工まで多くの壁を市民と河川事
務所とともに乗り越えたこと、学生が寝ずに頑張ってくれたこと、整備後の市民の利用事例(意図
したもの・思いがけないものを含めて)を説明する樋口先生。当時の情景がよみがえられたのだと
思います。予定時間を超えて想いを伝えられました。
引き続き、デザイン賞選考委員である宮城先生と桑子先生に講評をいただきました。


宮城先生の授賞式での講評の要点は以下の通りでした。
・夏の暑い日に現地を訪ね、1時間ほど見て周るつもりが4時間滞在した。居たくなるような場所が
随所にあった。
・筑豊の川に対するイメージを180度変えるものであり衝撃的であった。
・左岸緩傾斜草地の柔らかなエッジと右岸階段工のハードなエッジのコントラストが美しい。
・左岸水際は、上流から運ばれてきた土砂のうえに植物が繁茂しているもの。年に数度のかく乱が
作り出す風景であり可変性がある。そこに人が草刈りという手を入れていく面白さがある。
・管理用道路の微妙な起伏が視覚的に出てきて面白い。
・カヌー乗場スロープに用いている木デッキが良い。歩いていて気持ちが良い。
・設計者により施工監理が丁寧に実施されたことが、現地をみて分かる。
・ふるさとの川として、直方の子供たちの記憶に残る風景である。幸せなことである。
・欲を言えば、係船環の素材の組み合わせ(レンガ)はもう少し熟慮の余地があったのではないか。

桑子先生の授賞式での講評の要点は以下の通りでした。
・広々として伸びやかな気持ちの良い空間である。
・河川構造物というハードの整備でありながら、人々にとって非常に柔らかい感覚を持たせるデザ
インである。
・子供の頃よく川で遊んでいたが、川は、何もなく水だけが流れ広々として伸びやかであり、ただ歩
きたくなるような場所であったことを思い出した。
・いま直方に生まれ遠賀川で遊ぶ子供たちは、この川をみて石炭による黒い川の時代を感じない。
劇的に変化した空間の履歴を、時代ごとの思想とともに次の世代に引き継いでいくしくみが欲しい。
今回、授賞式での選考委員、委員長の講評、プレゼンテーション後の質疑応答から、遠賀川のデ
ザインは、緩傾斜高水敷、石積み護岸、カヌー乗場といったハードのデザインの秀逸さに加え、こ
の場所の空間の履歴に挑戦し、川に対する負のイメージを反転させたことを高く評価されたことが
分かります。
景観デザインの力を信じて、これからも日々精進していきたいと思います。


遠賀川、バンザイ。

February 4, 2010
第43回市民部会【遠賀川/羽野】

2月4日、遠賀川水辺館にて第43回市民部会(遠賀川を利活用してまちを元気にする協議会)
が行なわれました。
今回の市民部会の大きな狙いは、
“遠賀川の川づくりをみんなでワイワイ考える会を再開しましょう!”
というものです。
昨年の市民部会での議題の多くは、「遠賀川わくわく夢フェスタ」等、整備された遠賀川の河川敷を
利用したイベントの企画・運営に関するものでした。
しかし、これから遠賀川の河川整備事業は、今年度は水辺館前のカヌー乗り場から下流側沈下橋
までの区間の護岸改修とそれに伴うチューリップ畑の形状変更があり、
来年度以降は、上流側に架かる勘六橋の架け替え、それに伴う両岸スロープの移設・周辺の水辺
の改修等が計画されています。
要は、遠賀川はまだまだこれから市民の方々と一緒に良いアイデアを考えていかなければいけない
整備事業が盛り沢山である。ということです。
そこで、今回から市民部会では、これまでのイベントの企画・運営に関する議題に加えて、
再び“川づくり”に関する議題を積極的に取り上げ、みんなで考えていきたい! と考えています。
この日は、九大の呼びかけに応じて、平日の晩にも関わらず20名近い市民の方々が参加していた
だきました。


この日は、市民の方々から今後の部会で議論したいテーマが多く提案され、我々が準備していた
議題の半分も、取り上げることはできませんでした。
しかし、それが直方市民の遠賀川に対する真剣な想いの表れであり、これから市民部会は毎回
アツくなる、この熱を冷ましては失礼だと、こちらの気を引き締めるに十分な熱気でした。

写真上: 昨年10月と11月に実施した遠賀川利用状況調査の結果を説明してくれた4年生の西村さん
昨年の調査結果と3年前(平成18年)の調査結果を比較して、
①虫取り、魚釣り、水辺・風景を眺める等、来場者に新たな利用目的が生じていること
②家族での利用が増えていること
③3年前と変わらず多くの来場者がいること
を参加者の方々に伝えてくれました。
さらに、昨年の調査では両岸において利用者動線調査を行なったことで、右岸と左岸の両方を回遊する利用
が確認できたことを、図を示して伝えてくれました。

写真上:来場者歩行ルート図を先生に持ってもらい、ポイントを説明する西村さん。天晴れです。

写真上:市民の方々とワークショップを行なう際、やはり模型は説明ツールとして大きな威力を発揮します。
写真は、視覚障害者の方に模型に触れていただき、議題に取り上げている項目の対象を分かりやすく
理解していただいている場面です。
今回の市民部会では、
・今後の市民部会で取り上げたいテーマについて、市民の方々から多くご意見をいただいたこと
・今年度の河川整備事業(水辺館前~下流側沈下橋)の内容を、市民の方々にご理解いただいたこと
・チューリップ畑の形状について、議論ができたこと(引き続き次回も議論します)
が、収穫でした。
次回市民部会は、3月5日(金)18:00~@遠賀川水辺館です。
直方市民の方々、その他興味を持たれた方々、是非一緒に遠賀川の川づくりを考えていきましょう。
いつでもお待ちしています。

February 4, 2010
第5回久賀島まちづくり協議会【五島/高尾】

2月4日、第5回久賀島まちづくり協議会が開かれました。
この日の議題は、
1)「久賀島景観まちづくり計画(案)」について
これまで半年に渡って議論してきた久賀島のまちづくりの方向性について取りまとめたものです。
2)「久賀島観光ガイドブック」について
久賀島には観光パンフやマップがないため、観光客にきちんと情報が伝わっていませんでした。
教会だけでなく、島の様々な魅力を伝えるものとして作成しました。
3)「久賀島の景観のルール(案)」について
久賀島の景観を守っていくためのルール案について提案しました。
4)「久賀島まちづくり社会実験」の報告
2月13~28日に行われる久賀島まちづくり社会実験の内容について報告しました。
です。この日に向けて五島チームは、一生懸命検討を行い、準備をしてきました。

「久賀島景観まちづくり計画(案)」の説明は、その策定を中心的に行った渡邉さんが担当。
この一月、朝から夜遅くまでひたすら考え続け、つくり続けた資料を思いを込めて説明してくれました。
落ち着いて、きちんと話ができて、とてもよいプレゼンであったと思います。

「久賀島観光ガイドブック」の説明は、デザインをしてくれた宮崎君が担当。
とてもきれいなパワーポイントで、デザインのポイントをわかりやすく伝えてくれました。

宮崎君の説明の後、景観のルールを高尾が、社会実験を竹森君が説明しました。
参加した島民の方々には、積極的なご意見や貴重なアドバイスをいただきました。
今後は、2月後半に社会実験を行い、3月下旬に「第6回久賀島まちづくり協議会」を開催して実験結果の報告をし、
今年度の活動を終える予定です。

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