風景と地域づくりの
出会いと発見DIARY
景観研究室は、プロジェクトや研究を通じて、九州各地の風景・地域づくりに取り組んでいます。地域の人達と未来を語り合う、デザインについて現場で喧々諤々議論する、素敵な風景や食文化を見つける、地域の人達との長いお付き合いが始まる…風景・地域づくりの中で、たくさんの出会いや発見、感動が生まれる毎日。そんな景観研究室の日常をお伝えしていきます。
March 31, 2013
ボラード割り付け【唐津/平野】

カテゴリ【唐津(転落防止柵)】では、平成23年度から現在まで唐津の東港で整備されている転落防止柵についての記事をまとめています。以下の記事は平成24年度までに行われたものです。
平成23年度の整備で東港に7基のボラードが設置されました。これに引き続き、平成24年度には62基のボラードが設置されます。
2012年10月。設置の検討で課題となったのはボラードのスパン割を決めることです。この課題の要因となったのが使用するチェーンにあります。
転落防止柵に使用するチェーンは、平成22年に退役した唐津海上保安庁の巡視船「まつうら」のものを使用します。使用するチェーンは1本31コマで統一して切り出しました。
しかし、切り出してみたところ、同じコマ数にも関わらず、チェーンの長さが1本1本違うことが判明しました。これは、長年チェーンを海へと出し入れを繰り返していたため、チェーンの1コマ1コマが磨り減っていたと考えられます。
チェーンをボラードに取り付けたときには、チェーンの垂れ方(チェーン最下部の地面からの高さ)が一定になることが望まれています。よって、チェーンの長さに対して、ある決まったチェーン最下部の地面からの高さになるためのボラードのスパンがわからなければなりません。これを明らかにするために、チェーン1本1本を実測しました。チェーンの実測は施工業者である安全施設さんにもご協力していただきました。
スパン割を検討する手順は次の通りです。
①チェーンの長さを実測する
切り出したチェーンを1本1本クレーンで吊るして長さを実測しました。この作業は事前に安全施設さんにお願いして実測していただきました。
②チェーンに対して必要なスパン長を実測する
一つのボラードを柱に固定します。そして、二つのボラードにシャックルでチェーンを取り付け、チェーンの地面からの高さが420mmとなるように、もう一方のボラードの位置を調整します。このときのボラードのスパンを実測しました。特殊なスパン(コマ数27コマとなる箇所)等も合わせて実測しました。

③チェーンの割付の検討
チェーンの長さに対応するスパン長がわかりました。このデータを基に割付を決めていきます。東港の模型図面、チェーンの長さとスパン長を書いたボードを用いて、割付の検討を行いました。検討に用いた道具は、チェーンの場所を入れ替えながら検討ができるように製作しました。

この検討結果から、最終的なボラードの割付を完成させました。

March 31, 2013
救命浮環①救命浮環本体【唐津/平野】

【救命浮環設置の背景】
平成22年に唐津東港では悲しい水難事故が起きました。それを受け、転落防止柵を設置することが決まりました。
どのような転落防止柵を設置するかについては、事故現場を含む東港一帯が港湾エリアの賑わい・交流拠点となるように、今もなお整備が続けられている場所であるため、これまでの唐津のみなとまちづくりの経緯を踏まえ、懇話会、デザイン専門家会議の場で慎重に議論が進められてきました。
議論の末に設置された転落防止柵は、物理的に人が岸壁から海に転落することを防ぐのではなく、注意喚起を促す転落防止柵がこの場所に適切として採用されました。このときに、注意喚起を促す転落防止柵だけではなく、万が一転落者が出た際に他の利用者が瞬時に救助できる救命浮環の設置や、岸壁側の利用者に視線を向けられるベンチを配置するなど、港の空間全体で事故に向けた備えを設けておくことが重要だと考えられました。
このような経緯から、転落防止柵を設置するにあたり、救命浮環の設置も検討する必要がありました。
救命浮環設置にあたり次の3点について考えました。
①「安全性」:万が一転落者が出た場合に、早急に対応ができるようにすること
②「コスト」:救命浮環の設置機能、耐久性、デザイン等の用件を満たしつつコストをできるだけ安くする
③「デザイン」:これまで行われてきた東港一帯のみなとまちづくりの整備の経緯を踏まえ、たくさんの人が集まり、親しみをもってもらえるような空間づくりに寄与するデザインとする
【救命浮環本体の検討】
救命浮環は2009年11月に九大で検討していました。これを参考に検討を始めました。
救命浮環の本体は既製品をベースとしました。2009年11月時点で検討していたのは高階救命器具株式会社製の「P-1型(外径:560mm、内径290mm)」というタイプです。しかし、検討を始めた2012年の時点で、この型の浮環は廃版となり入手不可となっていました。
そこで、浮環の型から検討しました。
調査した結果、日本国内で救命浮環の製作を扱っているのは高階救命器具株式会社、日本救命器具株式会社の2社でした。その2社で取り扱う浮環の中から、日本救命器具株式会社製の「P-230型(外径:500mm、内径230mm)」を採用しました。これは子供、お年寄りでも扱えるサイズ、重量だったためです。現在、東港に設置されている「青い羽根」の救命浮環と同じタイプのものです。
救命浮環の型が決まったので、救命浮環の検討を行うため早速九大で「P-230」を注文しました。実物の「P-230」を見ながら救命浮環本体の検討をしました。
その結果、救命浮環は「P-230」をベースとして特注で救命浮環本体を製作することにしました。
【塗料の検討】
救命浮環は常時屋外に設置されます。そのため使用する塗料も耐久性が高いものを使用する必要があります。
市販品「P-230」の塗料は次のものを使用していることを確認しました。
■市販品「P-230」の塗料
「ビニデラックス300白(関西ペイント製)」 1回塗り
「ファインウレタンU100 白(日本ペイント株式会社製)」 2回塗り
塗料については、「関西ペイント」、「日本ペイント株式会社」、「イサム塗料」、「ターナー」、「SK化研」、「大同塗料」等の塗料会社に連絡して検討しました。そして、特注品で使用する塗料は次のように決定しました。
①ウレタン系の塗料を使用する
塗料の種類は基本的に「アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素」の順に耐久性が高くなります。アクリル塗料は耐候性が弱いため劣化が著しく早いです。フッ素が最も耐久性に優れているが、その分価格も高いです。しかし、特注品の救命浮環に使用するテトロン布に塗装した場合ではウレタン、シリコン、フッ素に耐久年数に差がでないことがわかった。また、テトロン布への付着はシリコン、フッ素に比べてウレタンが最も良いです。よってウレタンを採用しました。
②「ビニデラックス300白(関西ペイント製)」「セラMレタン(関西ペイント製)」を使用する
塗料は「関西ペイント」と「日本ペイント株式会社」の大手2大メーカーが存在します。この2大メーカーの塗料の性能が塗料メーカーの中でも優れていることがわかりました。よって、塗料はこの2つのメーカーの塗料から検討しました。その結果、「ビニデラックス300白(関西ペイント製)」、「セラMレタン(関西ペイント製)」に決定しました。下地に「ビニデラックス300白(関西ペイント製)」を塗るのは、今回使用するような油性の塗料を浮環に直接塗ると、布を浸透して浮環の発泡体に染み込んだときに、発泡体が溶けてしまうことを防ぐためです。
また、今回の種類の塗料を選んだ理由は次のためです。
・「セラM レタン」はウレタン系の塗料の中で耐候性に最も優れている。
・「セラM レタン」は塗装した表面にツヤが出る。
・同一の会社の塗料を使用した方が塗料の付着が良いので、下地にする塗料は「ビニデラックス300白(関西ペイント製)」にした。
【救命浮環特注品の仕様】
特注を製作するにあたっての「P-230」からの変更点は次のようになりました。
①帯の数を3本にする
救命浮環の止め具のデザインに合わせて帯を3本にします。そのため発泡体に巻きつける布は4枚継ぎではなく3枚継ぎとなります。継ぎ目の上から帯を巻きます。
②救命浮環の周りに巻いているロープは取り付けない
救命浮環の周りにロープが取り付けられているのは、船舶に乗せることを想定しており、一つの救命浮環に複数人が掴めるようにするためです。今回検討する救命浮環は陸に設置し、落水者を助けることを想定しており、救命浮環の周りのロープは不要なため取り付けません。
③Dリングを取り付ける
救命浮環に25mのロープを結びつけるためにDリングを取り付けます。P-230の周りに取り付けられているロープの取り付け方でDリングを縫い付けます。Dリングを取り付ける縫い目は、人が一人ぶら下がって力が加わっても縫い目は破れない強度をもっています。海面に浮かんでいる救助者を助けるとき、ロープを引いて岸までたぐり寄せます。そこから救命浮環を使って引き上げることは市販品でも期待していません。引き上げようとすると布が破れるよりも発泡体が破損すると考えられます。よって、海面に浮かんでいる救助者を助けるのには十分な強度を持っています。
④布はテトロンを使用する
P-230では発泡体を巻くのに帆布を使用しています。しかし、帆布は表面がざらついているので安っぽく見えてしまいます。今回は表面にざらつきのないテトロン生地を使用します。これは大型船舶用の救命浮環であるPC-25型に使用されている布であり、救命浮環に使用するために必要な機能は満たしています。
⑤塗料を変更する
屋外に設置することを想定して、紫外線、潮風に対する耐久性のある塗料を指定します。塗料は「ビニデラックス300(関西ペイント製)」を1回塗りするのはP-230 と同じです。その後に耐久性のある塗料として「セラM レタン(関西ペイント製)」を指定して2回塗りします。
【試作品製作】
救命浮環の特注の仕様が決まったことで、救命浮環の製作を行っている山梨県にある谷村工場の小嶋さんと頻繁に連絡を取り合うことになりました。私は福岡にいるため工場に通うことを考えませんでした。電話とFaxでのやり取りで特注の検討をしていきました。そして、九大で救命浮環の試作品を注文することにしました。
しばらくして注文した試作品が届きました。しかし、実物をみたところ、その試作品は期待した救命浮環のクオリティを満たしていませんでした。生地の素材は思ったよりもザラツキがあり、縫い目の精度は塗料の塗り具合は良くなく、再度検討が必要な点が出てきました。再度、製作要領を漏れがないように修正を加え、もう一度試作品の製作を依頼しました。今回は、製作するにあたって山梨の工場まで足を運ぶことにしました。
2012年8月20日、山梨県にある谷口工場へ行きました。小嶋さんに救命浮環の概要に関して直接顔を合わせて説明し、浮環製作の工程を確認しながら縫い付けの方法を相談しました。浮環の布地、塗料も製作前に確認できました。


救命浮環を包む布は3枚継ぎで作られます。


救命浮環の生地の縫い付けは全て手縫いで行っています。人の手作業であり、また浮環は通常と異なり特注で帯を3本にしているため、縫い目の精度にバラつきが生じてしまうという不安があります。精度良く完成させるためには一つ一つを丁寧に縫うことが重要となります。救命浮環は完成の質を高くするためには、ポイントポイントの指示を漏らさないこと、そして作業する方々に救命浮環製作に関する思いをしっかり伝えないといけないことを実感しました。
そして、救命浮環本体の試作品が完成しました。

March 31, 2013
救命浮環②救命浮環表面印字のデザイン【唐津/平野】

【救命浮環表面印字のデザイン検討】
救命浮環表面の印字および帯デザインの検討では以下の2点を考慮しスタディを行いました。
①緊急時に周りの人が救命浮環にすぐに気付くデザイン
②唐津東港の空間に馴染むようなデザイン
救命浮環表面に印字する文字のフォント、大きさは浮環のデザインに大きく影響します。まずは参考事例を見つけるため、インターネットを使って救命浮環の事例写真を集めることにしました。国内の写真事例で参考になりそうなものは長崎水辺の森公園設置された浮環くらいしか見つかりませんでした。国内に設置されている救命浮環の多くはオレンジ色の市販品が多かったです。そこでキーワードを「lifering」として海外の写真を検索すると多くの事例が見つかりました。また、文字のフォントを検討するために海外のサイトも利用して多くのフォントを集めました。収集した事例写真、フォントを参考にデザインスタディを行いました。
デザインスタディでは、九大で注文した救命浮環を白く塗装し、文字、帯を用紙に印刷して切って浮環本体に貼り付けました。

スタディからフォント、文字の大きさ、帯上のラインの太さによって救命浮環の印象が変えることがわかりました。線が太くなると救命浮環の文字、ラインの赤色が目立ちます。線が細くなると救命浮環の文字、ラインの存在が控えめになります。
設置する救命浮環は、東港の空間に馴染むデザインにしなければならなりません。東港の空間は風景を楽しんでもらう必要があるためには、自己主張の強い浮環のデザインはそぐわないと考えました。 よって、救命浮環のデザインは、フォントは控えめで、線も細くすることにしました。
■色
文字、ラインの色を「べんがら色」にしました。一般的な救命浮環は白地に赤の帯を採用しているため、検討する救命浮環も白地に赤系の色を使うこととしました。
べんがら色は赤系の色であり、また唐津焼きの色として唐津に馴染みがあります。唐津の雰囲気に合う色として水産加工場にも採用されており、唐津東港の雰囲気に合う色として採用しました。
■フォント
存在感が控えめフォントを選びました。また、採用したフォントは和欧混植時の和文と欧文の並びを重視して作られた「Axis Condensed Joyo R」というフォントです。唐津東港の欧米文化が入ってきた時代のイメージに合うと考えて採用しました。
■ライン
スタディでは救命浮環の帯にラインを入れることを検討してきました。ラインは自己主張がないように細くしていましたが、救命浮環を止め具に設置した際に、ラインはあってもなくても印象があまり変わりませんでした。むしろラインがない方が救命浮環の見た目が落ち着いて見えました。救命浮環は常時止め具に設置されているものであるため設置されているときの見え方が重要です。また、ラインはスクリーン印刷で印刷することができず、ライン入れは手書きで行うことになるためその分費用が増します。
ラインをなくした方が落ち着いたデザインになる点と、ラインをなくすことでコストが下がる点から、ラインは入れないことにしました。

上図、左が2009年のデザインで、右が最終案。控えめなデザインになっていることがわかります。
そして、最終的に、線の太さ、文字の間隔を調整し、最もバランスの良いデザインを検討し、デザイン案を決めました。

March 31, 2013
救命浮環③救命浮環表面印字方法【唐津/平野】

【救命浮環表面印字方法の検討】
救命浮環表面のデザインが決まったら、印字を製作所に発注をかけることになります。
救命浮環の印字方法には「塗装による印字」と「カッティングシートによる印字」の2つの方法があることがわかりました。長崎水辺の森公園に設置されている救命浮環にはこの2つの方法で印字された救命浮環が設置されていることが確認できました。長崎水辺の森公園の救命浮環に関して、設置した業者である総合電機株式会社に問い合わせ、長崎水辺の森公園の現地に行き撮影した写真と費用に関して整理して比較しました。

上の写真、長崎水辺の森公園で撮影したもので、文字の印字の方法が、左が塗装、右がカッティングシートです。
カッティングシートの方は経時変化でカッティングシートが剥がれることが確認できました。一方、カッティングシートと比べると塗装による経時変化が少ないです。
費用を比較すると大きな差がないことから、今回は塗装による印字を採用しました。
救命浮環の製作を依頼した日本救命器具株式会社では塗装による印字の注文は可能でした。しかし、ステンシルつなぎ文字の印字になるため文字をきれいに印字することができず、長期間の文字の判別性が期待できません。
そこで印字は専門の業者に別で依頼することにしました。
■手書き、スクリーン印刷の比較
株式会社音鳴印刷に印字に関して問い合わせたところ、塗装による印字方法は手書きとスクリーン印刷の2つの方法が考えられることが確認できました。手書きは職人によって一つ一つ手書きで文字を入れていく作業となります。スクリーン印刷は文字の型を作り、その型を浮環の表面に当てて印刷を行います。
手書き、スクリーン印刷の費用を比較すると、スクリーン印刷の方が安く済むことが確認されました。また、スクリーン印刷は一度型を製作すれば量産が容易になるため、今回の救命浮環表面の文字の印字はスクリーン印刷を採用しました。
試作品のスクリーン印刷は佐賀にある「クロカミスクリーン印刷株式会社」に依頼しました。
■スクリーン印刷の塗料
塗料は同じ種類の方が密着しやすいことがわかりました。よって、スクリーン印刷で使用する塗料は救命浮環で使用したのと同じ「ウレタン系」の塗料にしました。スクリーン印刷で使用する塗料はクロカミスクリーン印刷株式会社に提案して頂いた「SG740シリーズ」を採用しました。
この塗料はスクリーン印刷で使用するウレタン系塗料の中で最も耐候性が優れる塗料であり、2液イソシアネート硬化型という時間が経つにつれて密着性が増すタイプの塗料です。
また、文字の密着性を増すためにべんがら色で文字を1回塗りした後、クリアカラーの塗料をスプレーで噴射してオーバーコートしました。文字の印刷を重ねて印刷しないのは、印刷を重ねることで色落ちの対策になるが、厚み増して剥がれ易くなります。また、印刷の回数が増すと文字が重なるため文字が綺麗に仕上がりません。文字の耐久性の強化はクリアカラーの塗料によるオーバーコートで対応することにしました。
そして、印刷に使用する版を製作して、印字を行いました。これで救命浮環本体の製作は完了です。

March 31, 2013
救命浮環④止め具【唐津/平野】

【止め具の検討】
救命浮環の止め具として以下の機能を満たす必要があります。
①長期間の耐久性を持つ
ボラードが30年の耐久性があるため、止め具も同程度の耐久性を求めます。
②強度がある
イタズラされても壊れないような強度をもつ必要があります。
③救命浮環が常時はしっかり固定されているが、緊急時はすぐに使用できる
常時屋外に設置されているので風等で飛ばされないようにしっかり固定できる一方で、緊急時にはすぐに使用できるように取りやすくする必要があります。

流通している止め具では今回求めている機能を満たさないため、特注で製作することを検討しました。特注をするに当たり、次の点を採用しました。
■材質
長期間の耐久性を考えて材質は「ステンレス」にしました。佐賀県唐津土木事務所から、メンテナンスを考慮して耐久性の優れているステンレスを材料として使用するように要望があったため採用しました。
■救命浮環の受け止めフックの形状
受け止めフックはステンレス丸棒を曲げ加工することにしました。人が触れても怪我をしないように先端に角を作らないためです。また、救命浮環が風で簡単に飛ばされないように3本の浮環受けフックで固定します。
■基板の曲げ加工
ボラードの丸みに沿って取り付けるため、基板は両端を曲げ加工します。これは現在東港に設置されている「江藤造船所」が製作した「救命浮環アルミブラケット」の形状を参考にしました
■救命浮環の使い方の説明板の取り付け
止め具に浮環の使い方がわかるように使い方の説明板を取り付けることにしました。

以上の検討を元に図面を作成しました。初期はスタディ模型も作り、これを使いながら救命浮環の検討を行っていました。

そして、「江藤造船所」に相談したところ、ステンレスの加工を行う製作所として「(有)唐津ボーリング」を紹介され、試作品製作の依頼をすることになりました。
【止め具試作品製作】
基板の厚さ、棒の太さの検討は人が力を加えても板、棒が曲がらない寸法を(有)唐津ボーリングの園山さんと相談し、基板が曲がらないようにタップ溶接にする等、専門的なアドバイスを頂きながら検討していきました。


フックの幅の微調整はハンマーで叩いて行います。

溶接すると、表面が変色するため、酸洗いをして表面を磨きます。
今回の止め具で一つのポイントとなったのは滑り止めゴムの取り付けです。止め具は、救命浮環が常時はしっかり固定されているが、緊急時はすぐに使用できる機能が求められます。救命浮環がしっかり固定されるように止め具を図面通りに製作しても、救命浮環、止め具には製作誤差が生じます。その誤差を調整するために止め具にゴムを取り付けることにしました。救命浮環はゴムの弾力によって止め具にしっかり固定されます。
はじめは浮環受けフックの先端にゴムを取り付けることを検討したが、ゴムの収まりが良くありませんでした。
検討した結果、「D型ゴム(八幡ねじ製)」を止め具の基板に取り付けることにしました。こうすることで、浮環の裏からゴムの弾力で固定されます。浮環が設置されているときにはゴムは見えなくなります。ゴムの種類は一般的に流通するもので長期間の耐久性は期待できないが、簡単に手配が可能であるためゴムの付け替えを可能にして、ゴムが劣化したら付け替えるようにしました。

そして、試作品を試行錯誤して、検討した結果を基に最終的な製作要領を作成しました。

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