風景と地域づくりの
出会いと発見DIARY
景観研究室は、プロジェクトや研究を通じて、九州各地の風景・地域づくりに取り組んでいます。地域の人達と未来を語り合う、デザインについて現場で喧々諤々議論する、素敵な風景や食文化を見つける、地域の人達との長いお付き合いが始まる…風景・地域づくりの中で、たくさんの出会いや発見、感動が生まれる毎日。そんな景観研究室の日常をお伝えしていきます。
March 20, 2013
五島列島広域景観シンポ【五島/高尾】


3月14日に五島市福江で行われた「五島列島広域景観シンポジウム」が、
3月20日の長崎新聞朝刊に掲載されましたので、こちらにもアップします。
シンポジウムの基調講演には、主催者にお願いをして、土木や景観の専門家ではなく、
あえて観光の専門家をお呼びし、五島列島の強みや弱みの分析や、
どのように地域イメージを形成し、発信していくかについてお話いただきました。
豊富なデータと、ロジカルな内容、地域への誠実な思いにあふれた素晴らしいお話でした。
外から見れば一つに見える五島列島。
しかし、これまでこうした広域交流の機会はほとんどなかったそうで、
景観をテーマにした市民協議会、シンポ、懇親会は大変な盛り上がりでした。
このよい流れをまた来年度の活動につなげていきたいと思っています。
五島の地域づくりはまだまだこれからです。

February 5, 2013
久賀島の近況【五島/高尾】

景観研究室特任助教の高尾です。嬉しいことがありましたので、久しぶりの投稿です。
平成19年夏から通っている長崎県五島市。そこに久賀島という名前の小さな島があります。昭和40年頃には4000人以上いた島の人口も今では400人余。行政に見向きもされず(と言ったら言い過ぎかもしれませんが)少子高齢化、過疎化が進む一方で、島人たちは半農半漁の伝統的な暮らしを続け、その結果として美しい風景が残されていました。
平成19年から本格的に景観行政をスタートした五島市、努力の成果が実って平成21年には久賀島全体が国の重要文化的景観に選定されました。そのプロセスでは、行政と島民が膝を合わせて島のあり方を議論してきました。私も市のアドバイザーとして、当時の学生たちとともに主体的、積極的に議論に参加し、調査や計画提案を行ってきました。
当初からぎこちなかった行政と島民の関係も、最近少しずつ変わってきたように感じます。昨年には島民一丸となって漂着ゴミの清掃活動を行い、そこに多くの市職員が参加しました。そして今日、市からの知らせで、島民たちが、島の椿マップの作成と、案内サインの設置を自主的に行っていることを知りました。
本当はごく普通にあたり前の暮らしが守られることが理想なのかもしれません。でも、もう待ったなしの状況のなかで、島の人々が自ら動きだしたことは、たとえ小さな成果であっても、島の未来に一筋の光を差し込むようで嬉しく思います。上の写真は一斉清掃活動の様子を、下の写真は設置されたサインを撮影したものを市職員が送ってきてくれたものです。
皆さんもぜひ久賀島を応援していただければと思います。

August 23, 2011
第1回庁内勉強会の開催【五島/高尾】


五島プロジェクトは今年も続いています。平成20年度の市全域景観計画の検討、平成21年度の久賀島景観まちづくり計画の検討、平成22年度の奥浦地区景観まちづくり計画の検討に続き、平成23年度は五島市公共事業デザインガイドラインとその運用体制の検討を行っています。
この検討は、五島市の美しい風景に調和した公共事業を推進していこうとする五島市の強い意志から検討が始まりました。福岡大学景観まちづくり研究室(柴田久准教授)との共同研究で行っています。私は、これまで国や学会、自治体でつくられてきたデザインガイドラインを参考としながら、風景と調和した美しい構造物の実現に加えて、そこで暮らす人々のニーズにきめ細かくこたえ、喜んでもらえる、利用してもらえる、市民の暮らしを支える社会基盤整備の推進につながっていくガイドラインとしたいと思っています。
良いものをつくっていこうとすれば、それは最終的には「つくり手」に帰属します。ですから、ガイドラインの内容も大事ですが、それを使う人々の意識、使うプロセス、使う体制が重要になると思っています。ですので、担当者と大学で一方的にガイドラインをつくってしまうのではなく、公共事業に関わる行政職員(技術職員)と勉強会を開催し、意見交換をしながら、ガイドラインの内容を検討していくこととしました。
勉強会の開催に際して、関係各課にお送りした文書は以下のような内容としました。
「建設課では、平成19年の「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界遺産暫定リスト登録を契機として、平成20年度より五島市景観計画、重点地区景観計画(久賀島、奥浦地区)、景観まちづくり計画(久賀島、奥浦)の検討、策定を行なってきました。また、あわせて、「堂崎教会駐車場」や「五輪地区への道」等の改修事業において周辺景観に配慮した整備を進めてきました。
こうした一連の取り組みでは、それぞれの地区の住民の皆様と、市民委員会、まちづくり協議会、市民ワーキング、小学校ワークショップ、町内会説明会、個別説明会等の場を設けて、話し合いを進め、住民の皆様とともに考えるプロセスを大切にしてきました。
私たちは、こうした取り組みを通して、景観行政とは、単にものの見た目をきれいに整えることではなく、その地域に本当にふさわしい整備、その地域に本当に必要とされている整備のあり方を考えることだと考えるにいたりました。そして、国の重要文化的景観選定や世界遺産登録も、こうした姿勢の延長線上にこそ実現可能なのだと理解するにいたりました。
そこで、庁内勉強会では、五島市の歴史や環境を大切にしながら、五島市民の暮らしを支える公共事業のあり方を皆様とともに考えたいと考えております。私たちの世代だけではなく、私たちの子や孫の世代まで喜んでもらえるような、より良いものづくりを五島市に一つでも多く実現していきたいと考えています。」

その第1回目が8月22日午後と23日午前に開催されました。職員の参加しやすさに配慮して同じ内容で時間帯を変えて二回開催しました。第1回目は、担当者からの趣旨説明、私から事前に回答していただいたアンケート結果の報告に続き、柴田先生に「景観の基本と五島市の公共事業のあり方」と題して講義をしていただき、皆で意見交換しました。アンケート結果もとても積極的でしたが、意見交換も真剣な質問や意見をたくさんいただきました。
次回は10月20日午後と21日午前に開催予定です。公共事業における住民参加プロセスのポイント、五島市での最近の取り組み(堂崎教会駐車場や五輪の道等)のプロセスを紹介し、また意見交換する予定です。

May 20, 2011
久賀島重要文化的景観選定!【五島/高尾】


福岡大学景観まちづくり研究室や鹿児島大学木方研究室と一緒に3年前から主に集落景観に関する調査に参加し、
また景観計画やまちづくり計画等のプラニング、五輪の道のデザイン検討も支援してきた五島市・久賀島。
国の文化審議会は、平成23年5月20日に「五島市久賀島の文化的景観」を重要文化的景観に選定するよう文部科学大臣に答申を行いました。
http://www.city.goto.nagasaki.jp/pc/sekaiisan/news/news_syosai.php?id=54
五島市の景観を活かした地域づくりにとっては大きな一歩になったと思います。
ずっと支援をしてきた私としても、とても喜ばしい出来事です。
協議会に参加して切実に意見をくださった島民の皆さんや、
ともに調査、計画に汗を流した学生のみんなの顔が思い浮かびます。
地域づくりは30年が基本。まだまだこれからですから、これからも着実に一歩ずつ進んでいくよう、
五島市の取り組みを出来る限り支援していきたいと思います。
なお、久賀島については、6月11日(土)に開催される風景デザイン研究会の第6回風景デザインワークショップ・連続討論会で、
五島市文化推進室の松崎様と私をパネリスト、九大の田北先生をコーディネータとして主に地域づくりをテーマとして議論します。
興味のある方はぜひご参加ください。

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