五島の島々が持つ様々な表情を知れば知るほど、自分はこの地域のことを全然知らないのだと感じます。
もっともっと知りたくなる。春も夏も秋も冬も、朝も昼も夜も、雨の日も晴れの日も、一日として同じ日はないのだから。
そう感じたとき、自分は今この風景に恋しているのかもしれないな、と気づかされます。
文化的景観の調査、五島市全域を対象とした景観計画の策定、
研究者の交流を目的としたシンポの開催を行った昨年度に続いて今年度は、
①文化的景観の調査(続き)
②文化的景観保存管理計画の検討
③モデル地区である久賀島および奥浦地区における重点地区景観計画の検討
④三井楽地区と奈留島の集落における伝統的維持管理手法の研究
⑤研究者の交流と調査結果の地域還元を目的とした調査フィールドでのワークショップの開催
などを行っていく予定です。
今回は③のスタートを切るべく、竹森君と二人で打ち合わせおよび現地調査を行ってきました。
1枚目の写真は、久賀島で向かえた朝、宿から見えた湖面のように静かな久賀湾の風景。
2枚目は、新緑の明るい緑が美しい五島の山々。
3枚目は、現地調査で歩いた蕨と五輪を結ぶ道。
4枚目は、その道沿いに広がる水田。五島は台風を避けるために早期米が多く、4月初には田植えをします。
5枚目も、その道からみえた風景。とても良い道でした。
初日の打合せも手際よく充実した内容で、二日目の現地調査も市役所の方々と一緒にまわって、
現地を見ながら色々と議論できました。やはり現場で議論するのが一番です。
島民の方々と議論をするにあたっては、まず自分が現地を見ていないといけないと思い、
これまでも何度もまわってはいたのですが全部車でだったので、今回は歩いてまわることにしました。
かなりの距離を歩きクタクタになりましたが、今まで気づかなかった点をたくさん発見することができました。
出会いと発見DIARY
新M1の竹森です。あっ、福大柴田研のM1です。
五島のプロジェクトに昨年より参加させていただいてます。
今後、度々登場するかとは思いますが、どーぞよろしくお願いします。
さて、本題に入りますが、先日五島市景観計画の打ち合わせと住民説明会がありましたので、
簡単に報告させていただきます。
3/20~ 住民説明会
景観計画の素案ができたので、地元住民の方を対象に説明会を地区ごとに開催しました。
住民の方は景観計画を立てることで、いろいろな規制に縛られる生活になるのではないかと、かなりの抵抗感を
持ってましたが、市職員の方や高尾さんの説明のおかげで少しは誤解が解けたのではないかと思います。
「この景観計画は今ある五島市の美しい景観をこの先に残していくためのものです!!」
3/24 in五島市役所
市職員、コンサルタント、大学チーム(高尾さん、竹森)の三者による打ち合わせを行いました。市全体を対象ととした景観計画、景観条例の最終確認及び来年度の動きなどを話し合いました。
期限を翌日にひかえ、細かい言い回しのチェックや修正などを行いました。三者打ち合わせは毎回かなりの長期戦となります。この日も朝一の飛行機から最終便ギリギリまで話し合いは続きました。
と、まぁもっともっと詳しく書きたいのですが、いろいろな都合上こんなもので。。
これからどんどん進展してまいりますが、その都度報告させていただきます。
五島プロジェクトと竹森をどうぞよろしくお願いします。
樫ノ浦にある大木。写っている電線や看板などと見比べてみてください。めちゃめちゃ大きいです!!
1月31日~2月2日に、高尾・渡邉と梅野君(福大M2)、富山君(鹿大M1)の4名で、
五島市文化的景観調査の集落景観調査を行いました。
お天気にも恵まれ、絶好の調査日和でした。良いデータがとれた充実した3日間でした。
いくつかの代表的な集落の写真をお見せしましょう。
福江島にある堂崎集落。
五島のキリスト教信仰の象徴である堂崎教会が海から集まってくる信徒たちを出迎えます。
堂崎の北、半泊半島の中ほどにある「きびなご網代」という集落。
海がエメラルドグリーンに輝き、信じられない美しさでした。
神々しい風景。
半泊半島をさらに北上し、半島の先の先に存在する間伏(まぶし)という集落。
ここの風景は強烈です。信仰を守るために人々はここまでやってきたのか、と。
写真中ほどに広がる草原は、かつては放牧地だったと言います。
今はもう人が住んでいません。
長崎の離島「福江島」、の離島「久賀島」、の離島「蕨小島」。
日本で一番小さい有人の島と言われています。
今回初めて訪れたのですが、離島の離島の離島という設定から
勝手にもっと活気のない集落をイメージしていたのですが、
意外にも島には生活感が漂っていました。
独特の集落景観を有していると感じました。
調査に疲れた頃に、遠くをみればほっとするような美しい風景。
海と山に囲まれた五島の集落には、その恩恵を受けながら農業、漁業を行ない、
信仰を守り通してきた信徒の方々が今も生活をされています。
その方々の穏やかな暮らしを守っていけるように、
専門家の勝手な意見ではなく、地域の方々の心情に合った将来を考えたい。
過去を知り、時代を読み、未来を描くこと。
五島プロジェクトでは、「その3:研究活動」も盛んにおこなわれています。
そのひとつとして、1月9日に「九州の離島における地域連携による文化的景観の保全・継承」というタイトルでシンポジウムが開催されました。
文化的景観の調査や教会の建設・維持に関わる研究者たちが集まり、それぞれの事例の中で得た成果や感じている問題意識を持ち寄り、討議する場となりました。
議論は、文化的景観の価値評価や維持の方法論にとどまらず、「文化的景観の意義」を問う内容が中心となりました。
ともすれば、文化的景観の議論は、「昔がいいから昔に戻そう」とか「田舎は素晴らしい、絶対守りたい」みたいなところに陥ってしまう可能性があります。だけど、「景観が美しいから」という理由で人の暮らしを制約するようなことはあってはならないと思います。「地域が生きていくために景観を維持したい、だから暮らし方も維持していかなければ」という論理は成立するように思いますが。考え出したらキリがないです。
「専門家ができることは何か」という議論の最後に、大阪大学の小浦先生が「地域のシステムを理解し、地域ごとの選択を提示すること」とおっしゃっていました。
田舎は本当に情報がないところが多い(田舎がだめ、ということではありません。私も田舎で生まれ育ったから、よくわかる。情報が本当に入ってこないんです。)。今までまちづくりに取り組んだことがない地域では特にそうです。情報がないから、その地域がどのように生きていくか、みんなでこれから頑張ろうとするか、についての判断を正確にできない。一方、専門家は地域の生き方の判断を一人でしてはいけないし、することはできない。
だから、「その地域の昔からのシステム(生き方)を理解し、その地域の現状を冷静に見つめた上で、今後その地域がとりうる選択肢を提示する」ということが、専門家の役目ではないかというご発言でした。
地域のことを真摯に想う専門家たちの真剣な議論の場に居合わせることができたことを幸運に思いました。
文化的景観をめぐる議論や実践は、今後多くの成功や失敗を生み、様々な試行錯誤の中で成熟していくのだと思います。私もその過程の中に、何かの形で関与していきたい、と改めて思う1日となりました。
M1の渡邉です。
これは、五島市福江島の宮原の集落の風景です。
山間のわずかな平地の中に、水系に沿って住居や田んぼ、畑が構成されています。
現在、下五島のキリシタン集落における文化的景観の調査中です。
下五島のキリシタンは移住や迫害といった様々な歴史の中で、信仰を守りながら、五島で暮らし続けてきました。信徒の方たちの暮らしに思いをはせながら、集落の構造を読み解くこと、そしてその価値を証明すること、を、文化的景観の調査の中でしています。
これは、かんころ台。九州の人ならご存知、かんころもちを作る作業の中で使われる道具です。
さつまいもを輪切りにして蒸したものを、家族で干しています。
集落の構造、なんていうところにはとても疎かったのですが・・・。
「地域における思想や営みがあらわれている風景」が好きだなぁ、と思っていた私にとっては、出会えて幸せなプロジェクトです。
大学院を卒業する頃までには、「なんかいいよね」じゃなくて、ちゃんとその価値を語れるようになりたいし、その維持のために何ができるか、ということを考えられる人間に一歩近づきたいな、と思っています。
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