救命浮環止め具〜ものづくりの現場〜【唐津(転落防止柵)/平野】
唐津東港に設置する転落防止柵、平成23、24年度に引き続き今年度も設置が行われます。今年度で設置される予定の範囲が全て完了します。
さらに、転落防止柵の設置と合わせ、昨年度九大が検討した救命浮環も設置されます。現在、救命浮環は製作されている最中です。
今回進捗の確認も兼ねて、止め具を製作している(有)唐津ボーリングさんの製作現場を見学させて頂きました。
止め具のフックは溶接で取り付けられます。今回の溶接は仮止めのものでした。完成した救命浮環本体を実際に止め具のフックにはめて、フックの幅、位置を微調整してから再度溶接を行います。
また、鋼板に止め具の図面を写し、フックの溶接する位置がずれないための工夫をしていました。
◆フックの曲げ加工 裏話
昨年度、止め具の試作品が完成して私は一安心していました。しかし、私が無知だったため知りませんでしたが、止め具の製作で一番苦労したことは実は「フックの曲げ加工」だったそうです。
止め具の製作を依頼された(有)唐津ボーリングの園山さんはフックの曲げ加工をどうするか悩んでいて、曲げ加工専門の製作所に依頼しようと考えました。しかし、このフックの曲げ加工は、加工ができないと言われたそうです。
今回の仕様の場合、一本のまっすぐな丸棒をまず一度曲げ加工します。その後に今回のようにもう一度曲げ加工を行うことはできないそうです。
そこで園山さんが曲げ加工の方法を考え、止め具のフックを曲げ加工するため専用の器材を開発して、フックの曲げ加工を行いました。
今回、曲げ加工の作業も見学させて頂きました。
まず丸棒を器材にセットします。
ハンドルに力を加えて回すことで丸棒が曲げられます。
次は曲げ加工が難しい部分です。フックを器材の側面にセットします。
器材の寸法は加工するフックの寸法と合わせているため、まさにフックを曲げ加工するためだけの器材です。他の寸法の曲げ加工をする場合は器材を全て作り直さなければいけません。
フックのR(半径)に合わせて部品を付け替えます。この部品の寸法は、何回も試行して、必要なR(半径)が加工できるものを見つけたそうです。
最初と同様に、ハンドルを回して曲げ加工します。
反対側の曲げ加工を行うために、フックを器材の反対面にセットします。
これで止め具のフックが完成です。
今回の場合、まず曲げ加工の方法を考え出し、ありあわせの材料を使って器材を製作したそうです。
園山さんとお話したとき、「ものづくりは持っている知恵を使って方法を生み出すこと」とおっしゃっていました。方法を考えることは大変だと思います。しかしその一方で、そこが「ものづくり」のやりがいであると、園山さんをお話して感じました。私も研究室の経験を思い返すと全くその通りだと思います。
園山さん、昨年度はたった一つの試作品を製作するためだけに色々考えて頂き、大変ありがとうございました。そして、今回はお忙しい中お時間を取って頂きありがとうございました。
救命浮環止め具ができる最後までどうぞよろしくお願いします!