地域づくりやデザインを

協働するパートナー

景観研究室ではこれまで、風景・地域づくりの様々な知見・経験を積んで、学生達が社会へと巣立ちました。コンサルタントやゼネコン、公務員、研究者として土木の計画や設計に携わる者から土木雑誌の編集者、地域づくりや伝統工芸品のプロデューサー、フリーのデザイナーと、活躍のフィールドは多種多様。その中から、景観研究室が九州を舞台に地域づくりや景観デザインを協働するパートナーをご紹介します。
地域のルーツを再生して、
日本の豊かな風景を残したい。
 「まちを創る仕事がしたい。」都会で育った学生当時の私がぼんやりイメージしていたのは、地域の風景を一変させるような一見華やかに見える再開発でした。
 でもその考え方は、樋口研の門を叩いて以来、180度変わりました。九州の様々な地域のまちづくりプロジェクトに関わり、風景も歴史も資源もヒトも異なる中で、そこに住む人達と“地域らしさ”を悩み、お酒を飲んで本音で語り合い、そして未来を描き行動する、ディープな現場の連続でした。この樋口研での経験と出会いの蓄積が、私が九州で「地域の根っこ」を再生するまちづくり会社を立ち上げた原点です。また今日も九州のどこかに出かけて、“地域の風景を残す”お手伝いに行ってきます。
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  • 地域住民と地域らしさを発見し、未来を描く。
  • 歴史的な建物を活用し、まちの風景を残す。
  • できることから行動し、地域の事業を作る。
第4期生 OB
佐藤 直之
株式会社ルーツ・アンド・パートナーズ 代表取締役
まちづくりプロデューサー・プランナー
https://roots-is.me
時代を経ても陳腐化しない
土木デザインを実践する
 樋口先生は木・石・土を巧みに用いて、土木のデザインを実践してきました。土木のデザインは数十年経っても陳腐化しないものづくり。パリの観光といえば、美しい橋が架かるセーヌ川沿いの散策ですが、これは土木のデザインですが、そんな基盤となる風景を日本で作り続けてきました。また近年ではバリアフリー機能をもった木製歩道というグリーンインフラの開発に取り組んでいます。九大の教育プログラムを改編し、学生が実物の石積みや木橋をつくる講義も指導しているといいます。
 そんな先生の研究室から、風景に関わるプランナーやエンジニア、プロデューサー、メディア、研究者など多彩な人材が輩出され、私は多くの人に恵まれ学べました。ここで教わった考え方や情熱を受け継いでものづくりを実践していきたいです。
第7期生 OB
竹林 知樹
株式会社Takebayashi Landscape Architects(TLA) 代表
ランドスケープアーキテクト
https://www.tlaltd.co.jp
  • 研究室デザインチームとして関わった遠賀川直方の水辺づくり
  • 水と緑による顔づくりを目指した佐賀駅周辺整備基本計画プロポーザル提案
  • 地元・日之影町の石材を再利用した大日止昴小水力発電所
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ひとのための土木デザイン
 ここのところ、私はバリアフリーデザインにハマっています。世の中にあるバリア(障害)は、思いのほか多様です。施設などハード面のバリアだけでなく、心理的なバリアもあれば、制度やしくみにもバリアがあります。それは、純粋に技術的な課題の克服で乗り越えられるものもあれば、ひとの意識や考え方を変えなければいけないバリアもあります。あぁ、バリアフリー社会の実現は大変だなあと思うかもしれませんが、障害のある方々のお困りごとをうかがい、助けたいと思っている方々とじっくり話すことで、少しずつ、着実に良くすることができるんです。
 私は、三十路にさしかかり樋口研究室の門をたたきました。30代はどっぷり景観デザインに浸かりました。地域の皆さんの想いを紡ぎ、風景の記憶をつなぐ場をつくれたらと、仕事に励みました。20代のころは、構造物の設計に勤しみました。いま、四十路を迎え、バリアフリーにハマっていますが、実はすべて、どれもこれも土木デザインなんです。当事者のお困りごとに寄り添い、日々の暮らしを少しでも幸せに。昨日よりハッピーな明日のために、土木デザインが出来ることはたくさんあります。土木デザインの仕事は、社会をデザインすることですから、面白いですよね。ひとのための土木デザインに、私はこれからも取り組みたいと思います。
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  • 知的障害者アーティストの才能に日常的に間近に触れることで、
    共生社会への気づきを期待する九大バリアフリーアートプロジェクト
  • 駐車時に振り返る動作を必要としない、
    脊椎・頚椎損傷者に優しい通り抜けタイプの障害者用駐車場
  • 地域の歴史や生活景を継承する世代間交流の場としての
    ポケットパーク(第13回 キッズデザイン協議会会長賞)
第11期生 OB(社会人博士課程)
羽野 暁
九州大学キャンパスライフ・健康支援センター 特任助教
九州大学キャンパス計画室 併任室員
https://barrierfreelab.amebaownd.com/
地域の景観を支える研究
 良好な空間づくりを実現するためには、さまざまな立場、専門性が必要です。研究や技術開発もその一つです。
 私が九大景観研で関わったプロジェクト・事業では、木材や石材などコンクリートや鉄と比べると使用頻度の低い建設材料を積極的に取り入れていました。
 今まで使ったことのない新しい技術や考え方、もしくは行った事例の少ない取り組みを実践するには、裏付けとなるデータや試験的な取り組みで効果を測ることが、利用者や事業に関わる人たちの理解に繋がるのではないでしょうか。
 現在は寒地土木研究所・地域景観チームの研究員として、ものづくりやまちづくりを支援する研究や技術開発を行っており、九大景観研と木材の活用方法や国立公園の災害復旧支援のための研究を共同で実施しています。
第6期生 OG
榎本 碧
博士(工学)
国立研究開発法人 寒地土木研究所
地域景観チーム 研究員
http://scenic.ceri.go.jp/
  • 震災で被災した阿蘇カルデラ地域の文化的サービスを考慮した国立公園内の災害復旧ガイドライン作成に向けた踏査 (九大との共同研究 )
  • 支笏洞爺国立公園における景観整備及び自然資源を活用した整備の調査(九大との共同研究):写真は洞爺湖畔に設置された視点場からの眺望
  • 木材(国産スギ材)の音響特性を利用したバリアフリー歩道の開発:写真は九大内に設置した試験舗装
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地域住民が主役の景観まちづくり
 樋口研究室は現場主義。土木デザインにおいても、地域のまちづくりにおいても、現地を歩き、地元の方々としっかりと話をして向き合い、将来を見据え最適解を考えます。私も樋口研の学生の時、佐世保市のまちなか活性化プロジェクトに携わり、大学を離れて現地に常駐しながら、地元の行政や商店主の方々とまちづくりを実践。卒業後も佐世保市で都市全体を俯瞰する都市計画から、住民との対話による現場のまちづくりまで、幅広く行ってきました。現在はまちづくりの会社にて、様々な地域に足を運び、地域の皆さんとのまちづくりに携わっています。
 僕が思う景観デザインは、風景の中にいかに人々やその暮らしを見せられるか。イメージパースに賑やかな様子が描かれるように、そこに人がいて暮らしに溶け込むことで美しい風景が完成するものだと思います。僕は、これからも現場に出かけ、その地の人との出会いや協働、人と人との関係づくりを通して素敵な風景を実現していきたいと思います。
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  • 地域の魅力発信のために地元生産者が動き出した、青空レストラン
  • 地域住民とまちづくりを語り合う
  • 眺望確保・今後の維持管理に向けて、
    地域住民による伐採活動を展開
第8期生 OB
宮﨑 大
株式会社ルーツ・アンド・パートナーズ
まちづくりプランナー・ディレクター
https://roots-is.me/