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旧長崎街道の宿場のひとつであった塩田宿は、有明海の干満差を利用した川港として江戸期以降にたいへん繁栄した歴史を持っています。天草から船で輸送された陶石がここで陸揚げされ、有田等の焼き物の産地へと運ばれました。現在の塩田には、当時の長崎街道に正面を向け背後が川港に接した歴史的な建物が多数残っています。
 島谷先生の研究室と僕たちの研究室では、地元の皆さんと一緒に塩田宿の歴史的景観の再生とまちおこしに取り組んでいます。
 平成27年度には合計6回ワークショップを開催し、地域の皆さんに塩田宿の昔の思い出(昔語り)、将来どうなってほしいか(夢語り)について語り合っていただきました。最終回には、皆さんの議論をもとに旧長崎街道を含む街路の改修、川港の改修、歴史的建築物の利活用などのアイデアを盛り込んだ「塩田宿夢プラン」を作成しました。今後はこのプランが塩田宿でのまちづくりのガイドラインとなっていきます。
 塩田を語るときに忘れてならないのが「塩田石」です。塩田特産のこの石は、塩田周辺の地域で、お寺や神社の石畳や石垣、灯籠、民家の礎石、水鉢などに広く用いられてきました。しかし現在は残念なことにコンクリート等に押されて需要が減少し、ほとんど生産されていない状況です。「塩田宿夢プラン」の中には、旧街道等街路の舗装材、川港護岸の石積み材等にこの塩田石を積極的に利用することが盛り込まれています。地域の方々がご自宅などにお持ちの余った塩田石を譲っていただきストックしておく「塩田石ストーンバンク」活動も始まりました。
 夢プランに沿って素晴らしい歴史を持つ塩田宿の風景が確実に再生され、多くの観光客が訪れる賑やかな街となる日は、そう先のことではないと思います。
現在の塩田宿。
旧長崎街道沿いに多くの歴史的建築物が残っており、◯年に伝統的建造物群保存地区に指定されています。

塩田の夢プラン。テーマは「創造的再生」です。


現在の川港の風景。写真左側の家並みの向こうに塩田宿の街路があります。

往時の川港の姿。陶石輸送の中継地としてたいへんに栄えていました。

夢プランを作るために集まった地域の皆さん。伝建地区指定で頑張ってこられた地域のグループが事務局となり、多くの方々が参加する素晴らしいワークショップになりました。

塩田石ストーンバンク活動。軽トラで地域を回って使われていない塩田石を集め、将来のまちづくりプロジェクトのためにストックしておきます。


旧長崎街道に接する側道に残っている塩田石の石畳。