風景と地域づくりの
出会いと発見DIARY
景観研究室は、プロジェクトや研究を通じて、九州各地の風景・地域づくりに取り組んでいます。地域の人達と未来を語り合う、デザインについて現場で喧々諤々議論する、素敵な風景や食文化を見つける、地域の人達との長いお付き合いが始まる…風景・地域づくりの中で、たくさんの出会いや発見、感動が生まれる毎日。そんな景観研究室の日常をお伝えしていきます。
August 26, 2013
⑧本組み立て

さあ、ベンチ完成に向けてラストスパートです。
さすがに一度組み立てているので、作業は手慣れたものです。
本組み立てでは、仮組み立てでは行わなかった仕上げ作業をします。

ベンチの背板にあたる部分に、自分の名前を掘っているところです。
30年以上は設置されるベンチなので、失敗は許されません。
機械の使い方の説明と練習を行った上で、文字彫りをしました。
はじめは文字がガタガタで大丈夫かなと思う子もいましたが、練習してコツを掴んだあとは全員自分の名前をキレイに彫ることができました。

面取りを行っているところです。
本組みでは、座り心地が良いように面取りしたり、ヤスリで削ったり、
ネジが飛び出ている部分で服がやぶれないようにネジ締めを行ったり、
使い手のことを考えながら仕上げを行います。

完成しました。
最後にコアセミナー受講者のの感想を載せておきたいと思います。
木が伐採されている現場、木材市場、製材所を見学し、実際に伐採や加工の現場を見たり、重機を操作させてもらったりとたくさんの貴重な経験ができた。そして、木材がどのような流れを経て加工されているのかを知ることができた。
加工所では職人さんの手によって1ミリのずれもなく木材が次々と加工され、製品となっていくのを見て、職人さんの技術力の高さと加工方法の工夫に驚かされた。今回の見学では、たくさんの方々にお世話になりとても感謝している。
あらかじめ加工された部材をはめ込む簡単な作業だと思っていたが、気温や湿度などの条件によって起こる、微妙なズレを調整しなら組み立てる作業は、思っていたよりもずっと難しかった。木は加工しやすい反面、脆いという一面があるが、木の組み方を工夫することで強度を上げることができることが分かった。最後にベンチに自分の名前を彫った。初めてのわりには上出来だった。
今回のベンチ作りを通し、木について多くのことを学ぶことができた。実際に現場に見学に行くことで、1本の大きな木が各々の大きさや形に加工されていく様子を知ることができた。また、組み立てる工程では、組み立て方を考えることで木の特性をより理解することができたし、また製作途中につまずいた時もメンバーで意見を出し合い、協力し合うことでものづくりの大変さも体験することができた。1基のベンチを作ることに多くの人々が関わっていることや、時間や困難が伴うことなど様々なことを学ぶことができ、達成感はとても大きかった。
この授業で製作したベンチは実際に東唐津港に設置される。町の多くの人たちに利用してもらい、現在東唐津港で行われているまちづくりの手助けになればいいなと思う。

August 26, 2013
コアセミナー発表

7月12日にコアセミナーの発表会が行われました。
授業で製作したベンチとパネルを展示しました。

来る人に丁寧に教えていた1年生でしたが、塚原先生からこのベンチを大学が作った意味はなんなの?と鋭い質問がありました。
1年生は悩みながらも、なんとか答えていました。
7月22日には、g-30のコアセミナー発表会がありました。
パワーポイントを使い、しっかり説明していました。特にエコアコール処理についての説明が分かりやすく、先生たちも興味をもっていたようです。
TAとしての自分自身を振り返ってみると、最初はただベンチの製作・見学のスケジュールをこなす事で頭がいっぱいでした。
途中からこの授業を通して、少しでも1年生が勉強になり、木材について興味をもつきっかけになるように意識をして取り組んでみました。しかし、彼らに何か与えられたかは定かではありません。
塚原先生の問いは、僕から1年生に問いかけるべきものだと思い胸につきささりました。
彼らに興味を持ってもらい、主体的に考えてもらえるような質の高い次回にすることがTAの仕事になるのかなと思います。
来年、4年生がコアセミナーを担当する際には、ティーチング・アシスタントという意味を意識してもらえるように伝えようと思います。
岡村さん、鶴崎くん、山下くん、山本くん、印君
コアセミナーお疲れ様でした!

August 26, 2013
みなとまちづくりにおけるベンチ設置経緯

去年と今年にコアセミナーで製作したベンチは8月前半に唐津東港のプロムナードに設置されました。
ベンチを製作した一つの目的として、これまで説明してきたコアセミナーという授業の教材であることが挙げられます。
もう一つの目的は、これから説明する唐津みなとまちづくりにおけるベンチの設置です。
唐津東港では、3年前に小学5年生のお兄ちゃんが亡くなるという悲しい水難事故がありました。
事故の後にすぐ転落防止柵の設置が決まり、どのような柵を設置するかは、唐津みなとまちづくり懇話会で組織された「みなとの安全・安心計画会議」で慎重に議論されました。
議論の結果、設置される転落防止柵は、市民の方や来訪者がたくさん集まり、親しみを持ってもらえるような開かれた港づくりを進めていく中で、「海に近づいてはいけない」というような印象を強くいだかせるものではなく、「ここから先は危ないので気をつけてください」というような注意喚起を促す程度のものが適切だと考えられました。
また、転落防止柵と合わせて、救命うきわや、ベンチを設置することで、港ににぎわいを生みだし、常に誰かが港を見守ってくれているような状況を生み出すことで、事故に向けた備えをしていくことが重要だと考えられました。
これまで、唐津土木事務所で転落防止柵の整備は進められており、今年度、転落防止柵と救命うきわの設置が完了予定です。
そこで、転落防止柵と救命うきわが揃うのに合わせて、ベンチも一緒に設置すれば、みなとの安全対策がひとまず完了します。

コアセミナーで製作したベンチは、コアセミナーとみなとまちづくりの2つの目的をもち、東港にベンチを設置させてもらえるように懇話会で提案をさせていただきました。

August 26, 2013
募金活動

【懇話会での提案】
ベンチは木で製作しているため1基当たりの値段は、公園などに設置されるベンチよりも安いのですが、製作から設置まで1基当たり約6万2千円かかります。
今年4基製作して、去年の2基と合わせて計6基を設置するための予算が必要でした。
教育目的の費用だけでは足りないので募金活動をして、ベンチを製作・設置することを懇話会で行い、九大がその取組みをサポートすることを提案しました。

この提案をした後すぐに、大島の駐在員である安岡さんから1台分を寄付しましょうと話をいただきました。
学生たちもこれだけ頑張っているんだから、わたしたちもなにかしら協力したいと言ってもらい、ものすごく感動しました。
大島から寄付していただいた感謝を込めて、今回設置した1台は写真のように文字を掘らせてもらいました。
他にも、コアセミナー参加者の寄付、九州のまちづくりを学ぶ学生団体KL2、唐津市で開催された「海のカーニバルin唐津」での募金活動、佐世保のプロジェクトでお世話になっている方々からの寄付、九大内での募金活動を通して予算が集まりつつあります。
本当にありがとうございます。

▲kl2募金

▲コアセミナー発表会での募金活動

▲海のカーニバルin唐津
今までのように行政がお金をだして、工事をしてではなく、
取り組みに共感をした人たちで協力して、少しづつまちが変わっていく。
景観研の先輩たちも関わってきたみなとまちづくりの10年間の取り組みがたくさんの人を巻き込みながら、少しづつ進んでいる気がします。
人道橋、トロッコ倉庫、芝生広場、ベンチと少しずつかもしれませんが、みなとまちづくりの成果がでているようで嬉しいです。今後もこの輪を広げながらまわしていく活動に参加できたらと思います。

研究室内でもコアセミナーの作業と平行して、作業を行い4基のベンチが無事完成しました。
後は唐津東港に設置するのみです。

August 26, 2013
ベンチ設置

8月のお盆前に、設置作業に行きました。
作業として、まずレンガ舗装に振動ドリルで穴を開け、アンカーボルトを打ち込ます。ベンチの足に取付けたL字金物をアンカーボルトに通して、ナットで固定して作業完了です。
1基のベンチに対して、4つの穴を開けてアンカーボルトを打ち込み、計5基分行います。(1基分はプラットホームのベンチと交換しました。)
L字金物は、景観研がよくお世話になっているナフコに売っているものを加工して使うことにしました。
Φ17mmの穴を開けようとしましたが、景観研のボール盤では穴が開けれなかったので、救命浮環を作る際にお世話になった唐津ボーリングの園山さんにお願いすることになりました。
唐津ボーリングは、鉄、アルミなど金属関係の修理、加工ならなんでもやるものすごい会社です。会社の中には、様々な機械があります。どれも操作方法が分かりませんが迫力のある機械ばかりです。九州中からここでしか治せないマニアックな依頼がくるそうです。
船のスクリューの修理、ハーレーのエンジン修理、アルミの船などなんでも修理をしていました。

機械の使い方を教えてもらい、計20個のL字の穴あけ、面取りをボランティアでやってもらいました。
ありがとうございます。機械の修理のおっちゃんはかっこ良かったです。
道具が揃ったところで、まずは穴を開ける位置を決めるためにベンチを据え付けてみます。
据え付けたところで、穴を開ける位置をマークします。
そのマークをもとにドリルで穴あけを行います。
穴あけはズレを防止するために木のガイドを使用しました。

ドリルは、レンガ層、砂層、コンクリート層を少しづつ掘り進んでいきます。
この文章で書くとものすごく簡単そうな作業なのですが、この作業で何回も問題が起きました。
問題①
ドリルで急いで掘り進めると、レンガが詰まってドリルが抜けなくなり動かなくなる。
無理に動かすとドリルが壊れてしまいます。
結局、タガネやマイナスドライバーを使用して、レンガを取り外しました。
問題②
コンクリート層の固さが尋常じゃありません。まったくドリルが進みません。
作業効率がとても悪いです。
問題③
深くなる掘るほど地面に対して垂直にドリルを打ち込めないので、ドリルがひっかかる。
問題④
炎天下の中での作業。
これらの問題を試行錯誤しながら最終的に辿り着いた答えは、水をかけてドリルを冷やしながら掘り進める方法です。ドリルの先端は熱くなりすぎると、穴を開ける能力が著しく下がります。刃先に常に水をかけながら掘り進めることで今まで苦戦していた穴あけ作業が早く終わりました。

さて穴が開いた後は、ケミカルアンカーの出番です。
コンクリートの穴に入れて、その上からアンカーボルトを打ち付けることで中のふたつの液がハンマーで叩いてガラスが割れ、中の2つの液が混ざり硬化します。
ケミカルアンカーが硬化した後はベンチを据え付けて、ワッシャー、ダブルナットで固定します。
この作業を5基分繰り返して行いました。

施工が完了して、ナットをレンチで締め上げると何個かのアンカーボルトは回転するという問題が発生しました。ケミカルアンカーでアンカーボルトボルトがうまく固定できなかったためです。
原因として、穴の中の水が乾ききっていない状態で使用したためか、穴の中のゴミを掃除機で吸いきれてなかったためだと思われます。
対応策として、セメントと水と少しの砂を混ぜたセメントミルクを穴の中に流し込み固定しました。

芝生広場づくりの反省を活かして、準備を行ったにも関わらず問題もたくさん発生してしまいました。
やったことないことは先に試験的に自分で体験しておき、その後に段取りを行うことで現場での手戻りや問題が少なくできるようにしたいと思います。
ベンチが設置されたことは嬉しかったですが、施工がうまくいかなかったことは反省すべき点です。
ベンチの設置はこれで完了しました。
今後の予定として、8月27日にベンチと芝生広場の完成セレモニーを行います。
懇話会の皆さんや大島保育園の子どもたちに来てもらい、ベンチと芝生広場の成果を確認して、今後のみなとまちづくりに繋がるものにしたいと思います。

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