風景と地域づくりの
出会いと発見DIARY
景観研究室は、プロジェクトや研究を通じて、九州各地の風景・地域づくりに取り組んでいます。地域の人達と未来を語り合う、デザインについて現場で喧々諤々議論する、素敵な風景や食文化を見つける、地域の人達との長いお付き合いが始まる…風景・地域づくりの中で、たくさんの出会いや発見、感動が生まれる毎日。そんな景観研究室の日常をお伝えしていきます。
February 6, 2010

土木学会デザイン賞(その1)【行事/羽野】

2月6日、土木学会デザイン賞2009授賞式が土木学会講堂にて行なわれました。
研究室が2005年度に設計した“遠賀川 直方の水辺”が、土木学会デザイン賞2009最優秀賞
をいただいたため、その授賞式+プレゼンテーションに参加しました。

写真上:遠賀川 直方の水辺

島谷デザイン賞選考委員長より、チームを代表して最優秀賞の表彰状を授与される坂本君(現
筑波大4年、当時の水辺館YNHCメンバー)。緊張の面持ちで拍手を浴びています。

プレゼンテーションの前半に、坂本君が野見山さんのメッセージを代読してくれました。遠賀川に
対する野見山さんの想いが会場に伝わり、私も熱いものがこみ上げてきました。授賞式に駆けつ
けてくれた研究室OBOGのみんなも、私以上に熱いものがこみ上げたことでしょう。
野見山さんのメッセージは、是非、原本を読むか、録画したビデオを見て欲しいところですが、野
見山さんの想いが伝わりきれないことを承知で以下に概略を記します。
~*~ 野見山さんのメッセージ ~*~
遠賀川は永くゴミの多い汚れた川であった。
15年前から活動を始め、ずっと遠賀川に夢をみてきた。
その中で、夢をみることは責任も伴うという住民として一番大切なことを学んだ。
5年前から九大が加わり知恵の輪がひろがった。
木や石や花などの模型を手に、何度も楽しく夢を論じ合った。
論じ合った夢が本当に実現し、嬉しくて嬉しくて “バンザイ!”だった。
夢が実現し、また次の夢に頑張るエネルギーをもらった。
いまは遠賀川は子供たちの笑顔であふれている。
このまちに遠賀川が流れていて良かった。
遠賀川にパチパチと拍手を送りたい。
私たちの遠賀川、バンザイ!


プレゼンテーションの後半、遠賀川のデザイン意図、計画から施工まで多くの壁を市民と河川事
務所とともに乗り越えたこと、学生が寝ずに頑張ってくれたこと、整備後の市民の利用事例(意図
したもの・思いがけないものを含めて)を説明する樋口先生。当時の情景がよみがえられたのだと
思います。予定時間を超えて想いを伝えられました。
引き続き、デザイン賞選考委員である宮城先生と桑子先生に講評をいただきました。


宮城先生の授賞式での講評の要点は以下の通りでした。
・夏の暑い日に現地を訪ね、1時間ほど見て周るつもりが4時間滞在した。居たくなるような場所が
随所にあった。
・筑豊の川に対するイメージを180度変えるものであり衝撃的であった。
・左岸緩傾斜草地の柔らかなエッジと右岸階段工のハードなエッジのコントラストが美しい。
・左岸水際は、上流から運ばれてきた土砂のうえに植物が繁茂しているもの。年に数度のかく乱が
作り出す風景であり可変性がある。そこに人が草刈りという手を入れていく面白さがある。
・管理用道路の微妙な起伏が視覚的に出てきて面白い。
・カヌー乗場スロープに用いている木デッキが良い。歩いていて気持ちが良い。
・設計者により施工監理が丁寧に実施されたことが、現地をみて分かる。
・ふるさとの川として、直方の子供たちの記憶に残る風景である。幸せなことである。
・欲を言えば、係船環の素材の組み合わせ(レンガ)はもう少し熟慮の余地があったのではないか。

桑子先生の授賞式での講評の要点は以下の通りでした。
・広々として伸びやかな気持ちの良い空間である。
・河川構造物というハードの整備でありながら、人々にとって非常に柔らかい感覚を持たせるデザ
インである。
・子供の頃よく川で遊んでいたが、川は、何もなく水だけが流れ広々として伸びやかであり、ただ歩
きたくなるような場所であったことを思い出した。
・いま直方に生まれ遠賀川で遊ぶ子供たちは、この川をみて石炭による黒い川の時代を感じない。
劇的に変化した空間の履歴を、時代ごとの思想とともに次の世代に引き継いでいくしくみが欲しい。
今回、授賞式での選考委員、委員長の講評、プレゼンテーション後の質疑応答から、遠賀川のデ
ザインは、緩傾斜高水敷、石積み護岸、カヌー乗場といったハードのデザインの秀逸さに加え、こ
の場所の空間の履歴に挑戦し、川に対する負のイメージを反転させたことを高く評価されたことが
分かります。
景観デザインの力を信じて、これからも日々精進していきたいと思います。


遠賀川、バンザイ。

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