WORKS

風景に溶け込む 構造物のデザイン

嘉瀬川ダムの景観設計

ダムという巨大な人工物を自然のなかに据えねばならないとき、装飾の付与や形体操作などのレベルでなんとかできるものではありません。むしろ機能主義を徹底し無理・無駄のないミニマルデザインに徹することで、自然の中にあってダムは一定の景観的質を具えうる。僕たちはそう考え、主要付属施設のボリューム・形状・配置を機能的に最適化すること、主要付属施設の質感をダム本体のそれに揃えること、機能と無関係な形態操作や意匠を排除すること等に取り組み、その結果として周辺の美しい自然風景の中に質実かつ控えめに存在するダムとすることを目指しました。
 コンクリート表面のエイジングや周囲の植生の成長など、時の経過を味方としながら、自然の中にひっそりと佇む表情がゆっくりと成熟していくことを願っています。

嘉瀬川ダム景観検討の主な関係者

古賀 憲一(佐賀大学教授)/景観検討委員会委員長
丹羽 和彦(佐賀大学教授)/景観検討委員会委員
樋口 明彦(九州大学准教授)/景観検討委員会委員
播田 一雄(財団法人ダム水源地環境整備センター)/景観検討委員会の運営、関係機関調整
鈴木 正美(八千代エンジニヤリング株式会社)/ダム本体の実施設計
伊東 和彦(九州大学テクニカルスタッフ)/ダム本体実施設計支援
西村 浩(株式会社ワークヴィジョンズ)/景観検討委員会運営支援、ダム本体デザイン検討
有村 和浩(有村和浩建築設計事務所)/管理庁舎とダムサイト広場のデザイン検討
国土交通省嘉瀬川ダム工事事務所

嘉瀬川ダムの諸元

: 佐賀県佐賀市
: 2012年
: 洪水調整、かんがい用水補給、発電池
: 全面越流式動力式ダム
堤頂長 : 456m
堤体高 : 99m
嘉瀬川ダム全体風景。

当初案。ダムの中央部に配置された様々な大きさの付属施設が目立っています。


完成形。付属施設のボリューム・形状・配置を機能的に最適化すること、質感をダム本体のそれに揃えること、機能と無関係な形態操作や意匠を排除すること等により、ダムの表情をできる限りシンプルにしました。

ダム湖の風景。奥にはダムの上部が橋のように見えています。


付属施設群のボリュームを合理的に小さくしたことで、スケール的な破綻が回避できました。

悪い例①:鳴渕ダム
町木である杉をイメージしたというとんがり帽子の操作室。悪目立ちの典型例です。


悪い例②:浅瀬石川ダム
リンゴをモチーフにし、操作室をピンク色にしています。周囲の自然風景が台無しです。