WORKS

地域の風景を守り活かす ルールづくり

筑後川景観設計の手引き

筑紫二郎と呼ばれ日本を代表する大河の一つ筑後川。阿蘇に発し日田を抜け、広大な筑後平野を潤して有明海に至ります。この川の流域では太古から人の営みが存在し、神功皇后伝説を始め沢山の伝承や物語が語り継がれています。
 明治期以降、他の河川と同様に筑後川でも治水や利水を目的とした近代的な河川改修事業が営々と続けられるようになりました。その結果洪水などの危険は少なくなりましたが、その一方で往時の筑後川らしい風景や自然環境の多くが失われてしまったのも事実です。
 平成9年、社会的な環境保護思想の高まり等を受けて、河川法の改正がなされました。それまでの治水・利水に加え、環境保護の概念を取り入れたのです。河川生態系や植生の保護育成、河川風景の保全・修復、市民参加などの新しい考え方が導入されました。
 国土交通省九州地方整備局筑後川河川事務所と九大景観研では、平成23年から3年の時間かけて、日田から大川までの筑後川の風景の実態を仔細に調査しました。また、流域自治体等の筑後川にまつわる歴史・文化を丁寧に洗い出しました。
 今後の景観整備の方向性を考える上で大変参考になったのは、江戸末期に描かれた「筑後川絵図」です。当時の川の姿が大変正確かつ詳細に記してあり、近代河川改修以前の筑後川の今日の姿とは大きく異なる状態を知ることはできます。
 こうした資料や情報を総合的に活用して、日田エリア、吉井エリア、久留米エリア等特徴的な河川の姿を持つ地区ごとに具体的な河川景観整備の方向性を示すとともに、整備を進める上での留意事項等をとりまとめました。
 また、筑後川全域に共通する歴史的な石積み護岸の構造的特徴や工法、樋門等の付属施設の望ましい形状や配置等について、個別具体的な解説を付記しました。
 筑後川では現在、沢山の河川景観改善の取り組みが日々の河川管理の中で少しづつ進められていますが、その中で河川管理を担当する筑後川河川事務所の皆さんが常にこの手引きを参考にしてくださっています。すぐに大きな変化を期待することは現実的ではありませんが、10年度、20年後には、きっと美しい筑後川の姿が各地で蘇っていることでしょう。
 「筑後川景観設計の手引き」と同じようなものが他の河川でも作成されることを期待しています。お声がけいただければ、いつでもどこでも九大景観研がお手伝いに伺います!
詳細を現地調査に基づき、川全体を景観上特に重要なエリア等に区分しそれぞれのエリアに守るべきもの、育てるべきもの等について記しています。

江戸末期に作成された絵図は当時の川の姿を理解することのできる重要な情報源です。手引きではその中に、今日参考にすべき史実や場所の履歴についての解説を記しています。

現場に持って行って使いやすいように、表裏とも表紙に厚紙を使用しています。


河川工学でのセグメントの考えを、景観を考える上での基本として取り入れました。

市民と行政が同じ目線で参加し意見を交換しながら、具体的にどこをどうしたいかを語り合っている様子です。模型は、手を伸ばせば誰でも触れることができるように工夫してあります。


護岸に階段をどのように配置すれば歩きやすく風景にも馴染むかを粘土と厚紙を使って検討したものです。この方法は、ワークショップなどの場で即席でやってみることもできます。