ヤンマー倉庫で作り上げていた部材を現場に持ち出し、いよいよ棟上です。
倉庫建設の中で一番の力仕事なので、唐津のまちづくりに日々取り組んでいらっしゃる方にお声をかけて、
作業に協力していただきました。
平日で、少々霧雨の天気模様でしたが、たくさんの方におこし頂きました。
まずは壁部材を基礎のアンカーに据え付け、固定します。
次に三角形の屋根部材を屋根部材の上に載せ、固定します。
壁部材の桁と、屋根部材の梁に「火打」を入れ、平面的に安定させます。
最後に小屋のてっぺんに「棟木」を据え付け、固定します。
大工さんに加工してもらったホゾに棟木を打ち込んでいます。
ここまでで、ひとまず棟上完了です。
人手が多かったので、想定していた時間よりかなり早く終わりました。
作業にご参加頂いた皆さん、お疲れ様でした。
棟上が終わると、地元の方からサプライズがありました。
なんとご厚意で「餅」を準備して頂いており、棟上し終わったばかりの小屋の上で「餅撒き」させて頂きました。
大変おこがましくも小屋の上から撒かせて頂きました。
最高のプレゼントをありがとうございました。
地元の皆さんにご協力頂いた後、九大チームで小屋に方杖を取り付けるなど、
構造的に安定させる作業を少し行ないました。
今日の作業はここまで。
ほとんど小屋の骨組みが完了しました。
次は外壁を張り付けていく作業です。
少しづつ模型の形になってきました。
出会いと発見DIARY
今日は基礎石を添えて、基礎コンを打設するという基礎工の中でも非常に重要な作業を行ないます。
まずは前回のブログでご紹介した、旧松浦橋に使用されていた御影石を運び出します。
御影石のある浄水センター内にクレーン車とトラックを入れ、重さ500キロ近くある御影石4本を現場へ搬出します。
現場に着くと一旦、御影石を地面に置き、打設するコンクリートとの定着が良くなるように、御影石の表面をきれいにします。
御影石の表面には貝殻がついており、海岸部で使われていたことが理解できます。
表面をきれいにしたら再度クレーン車で吊り上げ、捨てコンを打設した溝穴に設置します。
このとき溝穴の表面と、御影石の表面にクサビを入れ、基礎高がなるべく水平になるようにします。
基礎石を設置すると、基礎コンを打設するためには溝穴の幅が狭すぎることが分かり、溝穴の幅を少し大きくしました。
溝穴の幅を大きくし終えた頃、生コン車が到着し、基礎コンを打設し始めました。
バイブレーダを用いて、コンクリートを溝穴と御影石の隅々まで充填した後、
小手を使って基礎の表面をきれいに均しています。
生コンを持ってきてくださった、唐津みなとまちづくり懇話会の田代さん(写真手前)にもお手伝頂きました。
松浦橋で使われていたという事実を示すため、ホゾ加工された部分は地面から出るようにしています。
約1.5㎥の生コンを使い切り、基礎コンを打設し終えました。
今日の作業では、地元の多くの皆さんに大変お世話になりました。
お忙しい中、ありがとうございました。
次は、御影石にアンカー用の穴を空けます。
トロッコ倉庫の主材は木材で、佐賀県産材の杉を使用します。
佐賀県では県産材の木材の利用を推進していく活動を行っており、
県民、大工・工務店などを対象に木造住宅の啓発する活動や、
県の森林・木材に関する情報を提供するサイト(http://www.yoka-wood.jp/)を開設するなどしています。
今回の木材は唐津の製材所に資材を発注し、地元の大工さんにプレカットを行なってもらいました。
部材の接続部の加工は、まさに職人技です。
口では言い表せない、ホゾ加工がいくつもあります。
こちらがお願いした合掌頂端部の特殊加工も、指示通りしっかりやっていただきました。
この加工は京都の寺社建築を参考に設計しました。
大工さんのこのような拘りのあるディテールの仕事っぷりには感動します。
あらゆる技能職の職人が少なくなっていると言われていますが、
このような技術には、伝統的で文化的、強いては芸術的な価値さえあると思います。
必ず継承されていかなくてはならないものでしょうか。
唐津浄水センター敷地内には長い間使用され、表面がいい感じにエージングした御影石があります。
この御影石は松浦川に架けられていた先代の松浦橋の資材として使われていたものです。
御影石が使われていたと思われる頃の松浦橋です。
写真から橋の資材はほとんど木材だったようです。
保管されている御影石をよく見ると、石材同士をつなぎ合わせるために加工したホゾがあります。
当時の石工の技術を伺い知ることができます。
トロッコ倉庫では、この御影石を基礎石として使います。
使われなくなるはずだった素材には、それまでの場所で使われてきたストーリーが刻まれています。
瓦と御影石をトロッコ倉庫に使うことで、2つのストーリーがそれには蓄積されます。
トロッコ倉庫にストーリーを持たせることで、唐津にあった風景の記憶が継承していければと思います。
擬洋風建築の外観で重要なものの一つが瓦です。
しかしトロッコ倉庫の建設にあたっては予算の問題で瓦の購入が難しい状況にありました。
そのため、どこからか瓦を譲り受ける事はできないかと考え、
唐津市や地元の業者さんにご協力頂き、使い道のなくなっている瓦の捜索にあたりました。
約1ヶ月間捜索の結果見つかったのが、「旧大島邸」の瓦です。
旧大島邸は、旧唐津銀行の頭取を勤めた大島小太郎氏の邸宅で、
唐津市内に残っている唯一の武家屋敷です。
当初、近接する小学校の立替に伴い、この大島邸を取り壊し、
そこに新たな校舎を建てるという計画が立てられていましたが、
市民団体の「大島邸を保存する会」の精力的な取組みにより文化財としての価値が認められ、
移築・保存という計画に見直されました。
移築・保存に向け解体工事が進んでいる最中、再築時には使用しない瓦があることが分かり、
それを提供頂くことになりました。
再築時に使用しない瓦とは、過去に大島邸の改修が行なわれた際に使用された平成瓦であり、
文化財として移築する際にはこの瓦ではなく、建築当初の瓦を復刻し使用するため、
今回提供頂くことができました。
状態は極めて良く、まだまだ現役として使える瓦です。
瓦が使われていたところが寄棟屋根だったため(トロッコ倉庫は切妻屋根)、
瓦の種類が足りず一部は購入となりますが、
大部分はこの瓦を使うことになります。
そのまま行けば、おそらく廃材として処分されていたと思われる瓦ですが、
新たな建物の屋根で今度はその役目を果たしてもらいます。
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