風景と地域づくりの
出会いと発見DIARY
景観研究室は、プロジェクトや研究を通じて、九州各地の風景・地域づくりに取り組んでいます。地域の人達と未来を語り合う、デザインについて現場で喧々諤々議論する、素敵な風景や食文化を見つける、地域の人達との長いお付き合いが始まる…風景・地域づくりの中で、たくさんの出会いや発見、感動が生まれる毎日。そんな景観研究室の日常をお伝えしていきます。
May 14, 2019
F3@唐津東港のロゴ塗装作業

平成14年から続いている唐津港での港まちづくり活動。昨年、二タ子三丁目倉庫の利活用を具体化させるためF3ワーキンググループが立ち上がりました。

尾道の海辺にU2というユニークな施設があるのをご存知ですか? 古い広島県営の倉庫で「上屋2号」と呼ばれていたものをリノベーションし、素敵なレストラン/カフェと雑貨やさん、そしてGiantの自転車店が入っています。「上屋2号」なので「U2」。特筆ものはサイクリスト御用達の小規模なホテル。大事な自転車を部屋に持ち込み壁に飾ることができるようになっています。詳しくは書きませんが、四国に渡る「しまなみ海道」が今や世界のサイクリストの聖地と成っており、世界中から尾道を訪れる自転車愛好家たちがこのホテルを利用するそうで、年間通して70%以上の稼働率とか。

F3ワーキンググループも昨年このU2を見に行きました。そして帰りの車中で「唐津でもできる!」と盛り上がったのです。

まずはネーミング。この際敢えてU2の二番煎じでいこう、ということになり、「二タ子三丁目倉庫」なので「F3」に決まりました。悪くないでしょ? まずはテナントや事業主体になってくれる組織を探さないといけません。今年の7月15日には、サイクルショップやレストラン関係者他をお招きして内覧会的なイベントを実施します。

それに向けて、九大景観研では、二タ子三丁目倉庫改めF3のロゴマークのデザインと同倉庫外壁の大扉の塗装作業を引き受けました。

みなとまちづくり懇話会のメンバーで地元建設会社の社長さんである岩本さんにお願いして、足場を作っていただき、それに上がって先週の金土の二日間で下塗りと仕上げを済ませました。

足場に上ってまずは輪郭線を描き、マスキングテープを貼ってから、アイボリーの文字部分から塗装開始。

 

よく乾いたところで背景のベンガラ色を塗ります。この色は唐津港まちづくりのテーマカラーで、これまでに県営新競り場、製氷施設、水産会館など新設されたほとんどの建物の外壁色に採用してもらっています。唐津焼独特のベンガラ色と、唐津港が石炭積み出しで栄えた時代の建物の煉瓦の色がモチーフです。

 

無事完成! 我ながらなかなかの出来映えです。何かがここで起こりそうな気配がしてきますよね。みなとに入ってくるフェリーやクルーズ船からバッチリ見えます。7月15日にお招きしているお客様達のハートをしっかり捕まえてくれることを祈っています。手伝ってくださった学生さん、そして地元の皆さんに感謝です。

May 13, 2019
大学院集中講義その1@嘉瀬川ダム

毎年この時期に、大学院の講義「実践景観デザイン論」を週末四回の集中講義形式で開催しています。今年の初回は嘉瀬川ダム。九大に来たばかりの頃にとても苦労してデザインを考えた大きなダムです。一昨年の土木学会デザイン賞で優秀賞をいただきました。

参加者は約20名。そのうち16名が留学生のため、講義は英語でしないといけません。日本語でやるより脳みそが10倍くたびれます。

豊かな自然の中に巨大な人工物を築造しなければならない時、どうすればできるだけ負のインパクトを小さくできるか? できるだけ無駄なボリュームを省きシンプルなデザインにすること、時間の助けを借りてエージングによる周辺との馴染みの深まりを計算しておくこと等々、現場を歩きながら試行錯誤の末にたどり着いた考え方を学生たちに話しました。わかってもらえたかなあ。

嘉瀬川ダムの少し上流にある北山ダム。ダム湖畔を公園として整備した素敵な場所です。これら二つのダムを比較すると、ダム湖という人工の風景を作る時にどんな可能性があるかがよくわかります。いつもは北山ダムでレンタサイクルに乗って湖を一周するのですが、今年は崖崩れのせいでできません。かわりに小さなボートに分乗して湖面から湖周辺の素晴らしい環境を見学しました。

嘉瀬川ダム上流にある石造アーチ橋。ダム湖に沈んでしまうはずだったものを移設保存しています。それ自体はいいことなのですが、アーチの下に水がないのがとても残念に思います。

次の週末は遠賀川に出かけます。

May 9, 2019
大分線路敷跡プロムナード(仮称)

今日は今景観研で携わっているプロジェクトの一つを紹介します。サイトは大分駅から高架化された線路に沿って東向きに10分ほど歩いたところ。大分駅の再開発と線路の高架化に伴い以前の線路敷が大分市役所所有地となったのですが、その一部を活用して駅から大友館跡公園までのプロムナードが整備されることになりました。

事業主体は大分市。景観研は、プロムナード全体の景観設計を担当しています。昨年度で実施設計がほぼ完了し、現在9月に開催されるラグビーワールドカップに間に合うよう、大急ぎで工事が進んでいます。

事業区間は大分市営の金池保育所から大友館跡公園までの延長ほぼ400メートル、幅15~20mの範囲です。プロムナードの背骨に当たるのは復員3mの木製散策路。大分市有林から伐採した杉を大量に使用します。以前ここが線路であったことを伝える古レールも埋め込みます。

散策路の北側には幅5~10mの盛土造成を行い、細長い「里山」を作ります。植えるのはもちろん大分市周辺の里山を構成する照葉樹主体の樹木です。単に四季を感じられる緑地を提供するだけでなく、大友館跡公園の樹林帯を経て大分川の河畔林と繋げることでビオコリドー(生態的回廊のことで、生き物が山村から農村、都市郊外、都心へと移動する通路になる)を形成し、今後大分都心部と外縁部との環境を樹林帯でネットワーク化していく最初の一歩にしたいと考えています。

散策路の南側は終日高架線の日陰になるため敢えて植栽は実施せず、線路のバラスト(レールの下に敷かれる大ぶりの砂利)を以前の線路を物語るデザイン要素として敷きこみます。

工事現場では現在散策路基礎部分や盛土部分が姿を現し、完成形がイメージできるようになってきています。もうすぐレールの据え付けと杉板デッキ材の設置が始まります。

景観研では残りの数ヶ月できるだけ頻繁に現場に伺い、ディテール等について工事担当者の皆さんのサポートを続ける予定で、ブログでも進捗状況を定期的にご報告しようと思います。

 

広幅員街路が横切るプロムナード中央部。左の煉瓦張り擁壁の奥が里山、その右は無人運転車・管理車両用のスロープ、赤いネットで囲われた部分が杉板張の散策路、そして一番右の工事看板に隠れているところが防災広場を兼ねた芝生広場になります。奥にそびえる高架橋は新しくできたJRの線路。

煉瓦は全て本煉瓦。積み方は旧国鉄仕様のイギリス積みです。焼ムラの味がなんとも言えません。腕っこきの職人さん達の手で一つ一つ丁寧に積まれています。石段の踏石には、以前大分市中心部を走っていた路面電車の軌道敷石を再利用しています。今日では手に入らない立派な錆色の国産御影石です。

木製散策路の基礎がほぼ出来上がり、仕上げに貼る杉板材の間に埋め込む古レールを仮置きした状況。線路の曲線が綺麗に出ています。古レールに浮いた錆もいい味出してますね。

April 20, 2019
阿蘇国立公園プロジェクト

九大の島谷先生を中心にチームを作り応募していた研究企画が、環境省の環境研究総合推進費の対象事業に選定されました。これから三年間かけて「阿蘇をモデル地域とした地域循環共生圏の構築と創造的復興に関する研究」に取り組むことになります。その中で景観研は、災害が発生した際に国立公園の素晴らしい景観・環境を損なうことなくむしろ強化するような復旧事業の方法論や具体的な手法を模索しガイドラインにまとめる仕事に取り組みます。また、ガードレイルや電柱などの様々な既存インフラについても、国立公園にふさわしいイノベーションの方向性を提案する予定です。

九大に籍を置く時間はもうあまり残っていませんが、荒巻くんはじめ研究室のみんな、そして札幌の寒地土木研究所の榎本さんの力を貸してもらいながら、最後の大仕事として精一杯頑張ります。今後は現地調査他の活動を随時ブログでご報告していきます。

April 14, 2019
研究室のメンバーチェンジ

三月、四年生の三人と修士の一人が研究室を「卒業」しました。三人が就職、一人は多領域の大学院に進学です。毎年のことですが、寂しいですね。

そして四月、今度は新四年生が二名研究室に加わりました。木村さんと川藤さん。久しぶりに女の子二人。一気に研究室が華やぎますね。一番嬉しがってるのは修士二年生の原田くんかな。

前列左から、研究室を巣立った藤村くん、佐々木くん、日下部くん。右端は大学院を無事卒業できた尾木くん。

左から新四年生の木村さんと川藤さん。

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