風景と地域づくりの
出会いと発見DIARY
景観研究室は、プロジェクトや研究を通じて、九州各地の風景・地域づくりに取り組んでいます。地域の人達と未来を語り合う、デザインについて現場で喧々諤々議論する、素敵な風景や食文化を見つける、地域の人達との長いお付き合いが始まる…風景・地域づくりの中で、たくさんの出会いや発見、感動が生まれる毎日。そんな景観研究室の日常をお伝えしていきます。
June 25, 2013

実践景観デザイン論【瀬ノ下/行徳】

今年度は樋口先生の集中講義(実践景観デザイン論)が前期に行われ、土木専攻とユーザー感性学府の学生、計30人受講しています。
6月23日は瀬ノ下へ現場見学に行ってきました。
午前に京町コミュニティセンターで授業を受け、午後から現地見学をして、最後に会場に戻りディスカッションを行いました。

午前の講義の様子です。
水天宮付近が歴史的に大事であることを九大景観研が調査し、その結果を九州地方整備局の方に示して理解してもらえたため、景観や歴史に配慮した樋門の設計が行うことができた経緯について説明がありました。
水天宮や石積みの歴史調査、日常の利用調査、イベント時の利用調査の結果を踏まえて設計が行われています。

午後の現地調査では、水天宮、年代ごとに違う石積み、フラップゲート方式の樋門、
天端道路、高水敷のプロムナード、操作室と一つ一つ丁寧に教えてもらいました。
葉っぱを使ったコンクリート表面仕上げへの反応の仕方など、分野が違う学生が集まっているため興味を持って話を聞いている部分が違いました。
操作室付近の駐車場では、昔はいたるところで石積みが使用されていたという説明がありました。
石積みの代わりにコンクリートが数十年使われることで土木事業で石積みを使うノウハウや実績が失われてしまったことや、一つ一つ違う形の石を使うため強度計算が難しいなどの理由から、現在の土木事業で石積みを使うことは難しいです。
しかし、ずっと受け継がれてきた日本の石積みの技術を継承している石工さんは確実に減っており一度伝統が途切れてしまうと技術はもう失われてしまいます。
この授業を受けている世代が、石や木などの自然物を土木事業で使用していくことができるかできないかが、今後の日本の風景をつくり、技術を守り伝えていけるかの分かれ目だという話がありました。
授業後のディスカッションでは、土木の世界を知ってもらった上で、ユーザー感性の学生に自己紹介をしてもらいました。
ユーザー感性の学生は、それぞれ興味のある分野について分かりやすく説明してくれ、目的意識を明確に持って学んでいるのだろうなと感じました。
自分や他の土木の学生と比べると大人で、土木の学生はもう少し自分の学ぶ分野について考えて学んで行かなければならないと思います。
最後に先生から、今回の瀬ノ下では住民参加がうまくいかなかったことについて問題提起がありました。
今度見学に行く遠賀川では60回、松浦川のアザメの瀬では100回ものワークショップが行われ、住民の人たちが土木事業に積極的に参加し、自分たちの土地の風景について考え、良い空間が生まれています。
瀬ノ下と遠賀川、アザメの瀬の違いは共有できる原風景(自然な川で遊んでいた頃の風景)を持っている人が地元にいるかいないかということでした。
じゃあ、そういう人がいない場所ではどうするの??
経済の成長の中で、自然の風景や自然と人が調和した風景は確実に失われてきています。
現状のまま、おじいちゃん、おばあちゃんの世代がいなくなったら、日本の風景をつくるモチベーション、きっかけ、ノウハウ、技術の多くが失われるかもしれません。
最後に引っかかるものが残りましたが、授業は終始穏やかな雰囲気で行われ残り3回楽しみです。

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