風景と地域づくりの
出会いと発見DIARY
景観研究室は、プロジェクトや研究を通じて、九州各地の風景・地域づくりに取り組んでいます。地域の人達と未来を語り合う、デザインについて現場で喧々諤々議論する、素敵な風景や食文化を見つける、地域の人達との長いお付き合いが始まる…風景・地域づくりの中で、たくさんの出会いや発見、感動が生まれる毎日。そんな景観研究室の日常をお伝えしていきます。
February 11, 2010

事例調査・石見銀山【五島/高尾】


五島プロジェクトでは、市の方々と一緒にたくさんの事例調査を行いました。
今年度調査を行った地域を挙げると、
・民泊の先進地である小値賀町
・我国で初めて集落が世界文化遺産となった白川村荻町
・我国で初めて景観計画を策定し、重要文化的景観に選定された近江八幡市
・同時に世界文化遺産を目指している長崎市、旧外海町、平戸市
これらに加え、今年度最後の事例調査として、2月9~11日に
我国で初めて「文化的景観」というテーマで世界文化遺産となった石見銀山を視察しました。
石見銀山以前に日本で世界文化遺産に登録されたものを挙げれば、
姫路城、厳島神社、原爆ドーム、京都、日光東照宮、熊野古道などなどであり、
登録され、より高い価値付けを受けることによって、それらが守られ、
後世により確実に残されていくということが主眼であったと考えられます。
結果的には、日本人なら誰もが知ってるメガ観光地が選ばれてきました。
そうした経緯からすれば、石見銀山は世界遺産による地域活性化を目標としてはっきりと示した
わが国で初めての事例であり、その良し悪しの議論も含めて、五島市にとってとても参考になる事例であったと思います。
印象に残ったポイントが2つありました。
一つは、市の担当者の方が
施策の不十分な点がわかれば、なるべく早く柔軟に修正する姿勢を持たなければならない。
しかし、これは行政が最も不得意とすることでもある。
石見銀山でも現場での問題点が見えてから施策を修正するのに随分長い時間を必要としました。

とおっしゃっていたことです。
世界遺産に関わる取組みは、通常の業務とは異なり、
何が起こるかわからない中で試行錯誤しながら、様々な人との合意形成を図っていくことが求められ、
もっと言えば特別なミッションを与えられた総合的な「プロジェクトチーム」を組織の中につくらないと
なかなか対応できないものであると言えます。
登録はゴールであるとともにスタートとなるため、腰を据えた、長い時間をかけた取組みとならざるを得ないでしょう。
もう一つは、石見銀山の世界遺産としての価値の伝え方についてです。
「文化的景観」の価値は、その景観を成立させている構造を理解しなければわからない。
でも、それは短い時間では難しいし、一般の観光客にはほとんど無理なお願いです。
これは五島にも共通する検討課題です。
石見銀山では充実した内容の世界遺産センターやDVDを作成し、ガイドの仕組みもあり、
集落から銀山までを歩かせることによって全体の構造を体験として理解させようとしている。
それでもやはりわかりにくいものはわかりにくい。ではどうするか?現場をみながら考察しました。
私の考えたポイントは、まず、中心(主役)を決めること。石見銀山ならやはり坑道と精錬所跡。
ここから遡っていくように全体の構造を説明する。つまり、ストーリーの起点を与え、結論を先に言うこと。
それからもう一点は、観光客に対して求めるレベルをわけること。
つまり、客が自分のレベルに合わせて情報へアクセスできるように、
観光客受け入れシステムの全体像をわかりやすくすること。
例えば、世界遺産センターとDVDとガイドの内容がどういう関係になっているのか、
どれが平易でどれがマニアックなのかがわかるようになっていること。
五島の場合は、これを他の市町と連携しながら、かつ市内の他の魅力も含めた総合的な内容として、
さらに言えば、出来る限り一本化されたシステムとして実現することが望ましい。
このシステムをどういった構造とするか、今後の重要な検討課題と思います。

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